プロ野球

「もう弱音は言っていられない」福浦和也から“バトンを託された男”鈴木大地の心意気

岩国誠

2019.09.25

福浦から言わば「後を託された」鈴木。FA権を取得したいま、その去就が注目されている。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

「試合に勝ってくれて、選手たちがたくさん打ってくれて、本当に嬉しかったです」

 この日の主役の第一声は自らのことではなく、チームに勝利を呼び込んだ後輩たちへの想いだった。

 9月23日に行われたロッテ・福浦和也の引退試合は、6-1でロッテが勝利した。先制の口火を切ったのは鈴木大地。福浦から「後を託された男」だ。

「福浦に勝利を」と明確なモチベーションを持ったロッテ打線は、この日、初回から攻勢を仕掛けた。

 1回、1番・荻野貴司が日本ハムの先発・堀瑞輝の138キロのストレートをセンター前に運ぶと、2番・鈴木の2球目を捕手・清水優心が後逸。ランナー二塁となった後、鈴木は外角低めのストレートを逆方向へ押し込むと、打球はマリンスタジアム特有の風に乗り、レフトオーバー。荻野が先制のホームを踏んだ。

「僕の中では結構しっかり打てました。野手も前に守っていることは分かっていましたし、打った瞬間抜けるなと。荻さん(荻野)もこの2日間、いい形で出塁してくれているので、つなげられて良かったと思います」

 チームリーダーの先制点がきっかけとなり、4番・井上晴哉、5番・清田育宏の連続タイムリーで2点を追加。その後も、井上や藤岡裕大のタイムリーなどで5回までに11安打6点を奪う猛攻を見せた。

「『福浦さんのために最高の花道を』という想いで、チーム一丸となってやっていました。一打席でも多く回したいと思ってやっていましたし、最後は(チャンスがあれば)守ると聞いていた。そういう想いでみんな一つになったと思います」

 鈴木は序盤からの攻勢をそう振り返った。

 チーム一丸となって攻めたことで大量リードを得たロッテは9回、DHを解除し、福浦を一塁に起用することができた。そして、福浦は自らの劇的ファインプレーで引退試合を最高の形で締めくくってみせた。

 試合後の引退セレモニーで、選手代表として福浦に花束を贈呈したのが鈴木だった。

 その際、こんな言葉を交わしていた。

「『お疲れ様でした』と言った後、『これからもよろしく。任せたぞ』と言われました。あと、自分から『どんな形になるか分かりませんが、ここで一緒にやれたら』という思いは伝えました」
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バトンを託した男と託された男