プロ野球

奥川恭伸は「マエケン?」現役スカウトが語る本当の評価

氏原英明

2019.10.15

高校生離れした完成度を誇る奥川。中日の名スカウトは、その将来像を前田健太になぞらえた。 写真:徳原隆元、Getty Images

 並び立つ巨星・奥川恭伸(星稜高)と佐々木朗希(大船渡高)。17日に迫った今年のドラフト会議で、スポットライトを浴びるであろう高校No.1ピッチャーのふたりだ。

「完成度の奥川」、「潜在能力の佐々木」というのが彼らに対する一般的な評価だが、果たして、真の実力はどれほどのレベルにあるのだろうか。

 スカウト歴19年、中日ドラゴンズの関西担当スカウトとして、大島洋平、平田良介、大野雄大ら現在の主力選手の獲得に尽力。現在はチーフスカウトを務める米村明氏の証言をもとに、彼らの実力を解き明かしていこうと思う。

 まずは奥川についてだ。
 奥川はこの夏の甲子園で星陵を準優勝に輝いた。最速154kmのストレートを武器に、カーブ、スライダー、カットボール、スプリットなど多彩な変化球を操る。コマンド能力にも優れる本格派右腕だ。

「制球力、球威、勝つことに関してのハートの強さなど総合力ではNo.1。今年の高校生の中で一番早くプロで活躍できる素材であると思うね」

 そう語る米村氏が奥川に最も惹かれているところがある。
 

「アウトコース低めに、きちっとコントロールしたボールを投げることができる。しかも、キレのあるボールをだ。すべてのボールをアウトローに制球力高くきっちり投げる完成度の高さが、彼の持ち味だと思う」

 この夏の甲子園でも、そして、その後に韓国で開催されたUー18W杯でも、際立ったのはアウトコース低めに出し入れするストレートとスライダーだった。メジャー候補生たちすらバットが空を切り続け、文字通り牛耳った。カナダ戦では7回18奪三振の圧巻の投球だった。

 そんな奥川に対して「田中将大(ヤンキース)のようだ」といったのは、元楽天の捕手で、現在は智弁和歌山高の監督・中谷仁だ。だが、奥川が誰に近いスタイルでどんな将来像を持っているのかは、意見が分かれるところでもある。本人は「菅野智之さん(巨人)のような投手が理想」と語っているものの、果たしてスカウトの目にはどう映っているのだろうか。

「前田健太(ドジャース)やね。空振りを取れるところ、コントロールの良さなど似ている部分が多い。W杯のカナダ戦では、メジャーのドラフトで指名された選手から空振りを取っていたでしょう。空振りを取れる確率の高い投手。彼の投げる球は全てが一級品だからね。

 先ほどの話にもつながるけど、3ボール0ストライクからアウトローのギリギリに投げられるのが高校時代の前田だった。奥川もそれができる。先発投手はすべての試合で、カウント1−2に追い込んでいける展開を作れるわけではない。投手不利な時に、アウトローにビシッと投げて、セカンドゴロやショートゴロに打ち取るようなボールを投げることができるのが奥川なんです。アウトローにきっちり投げる能力は高い」
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完成度の高い奥川に伸びしろはあるのか?