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大谷も未到達の「通算10勝&70本塁打」を成し遂げた“早すぎた二刀流”リック・アンキールの波乱のキャリア<SLUGGER>

出野哲也

2021.05.31

イップスで投手を断念したアンキールは打者として感動的なカムバックを果たした。(C)Getty Images

イップスで投手を断念したアンキールは打者として感動的なカムバックを果たした。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)の投打二刀流での活躍が、連日大きな話題を振りまいている。その際、必ずと言っていいほど枕詞になっているのが「ベーブ・ルース以来の……」というフレーズだ。

 まるで、ルースだけが持っていたすべての二刀流記録に大谷が続きそうな勢いだが、投打同時進行ではなく、「投手から野手に転向」といったケースを含めれば、両方で才能を発揮した選手の数はぐっと増える。

 1999年にメジャーデビューし、波乱のキャリアを送ったリック・アンキールもそんな選手の一人だ。投手から野手に転向した彼は、純粋な意味での「二刀流選手」ではないかもしれないが、「通算10勝&通算70本塁打」「ポストシーズンで先発登板&野手として本塁打」という、ルース以外に誰も成しえなかった記録を達成した。ちなみにこの2つの記録は、大谷もまだ成し遂げていない。
 

 大谷と同じように、アンキールも高校時代から大きな注目を浴びていた逸材だった。97年にドラフト2巡目でカーディナルスに指名され、ドラフト指名選手で当時史上最高額の契約金250万ドルで入団。もちろん当時は二刀流の発想はなく、プロ入りと同時に投手に専念した。

 アンキールはすぐに才能を発揮した。99年に20歳1か月でメジャーデビュー、翌年は先発ローテーション入りして11勝、リーグ9位の防御率3.50、194三振は7位といきなり好成績を残した。4月に2本のホームランを放った際には“ルース二世”との声も上がり、新人王投票では2位。左腕から繰り出すカーブの威力は、サイ・ヤング賞3度の大投手サンディ・コーファックスと比較されたほどだった。

 ところが、ポストシーズンの大舞台で、アンキールは突然の制球難に見舞われてしまう。ブレーブスとの地区シリーズ第1戦に登板したアンキールは、ホームベースの手前に叩きつけたかと思えば、捕手の頭上をはるかに超えるボールを投じるなど大荒れ。実に1試合で5つものワイルドピッチという110年ぶりの記録を作ってしまった。さらに次の登板でも暴投と四球を連発し、この年のポストシーズンでは合計4イニングで11四球、8暴投、防御率13.50というとんでもない数字が残った。
 
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