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MLB

“鉄腕”マーシャルには孫弟子がいた?4度の手術を乗り越えた不屈のスクリューボール右腕の活躍に期待<SLUGGER>

宇根夏樹

2021.06.08

先ごろ亡くなったマーシャルのいとこの息子であるハニーウェルJr.。球界では数少ないスクリューボールの使い手として知られるが……。(C)Getty Images

先ごろ亡くなったマーシャルのいとこの息子であるハニーウェルJr.。球界では数少ないスクリューボールの使い手として知られるが……。(C)Getty Images

 5月31日に78歳で亡くなったマイク・マーシャルは、リリーフ投手としての鉄人ぶりから“アイアン・マイク”と呼ばれた。1971年から79年までの9年間に、99イニング未満だったのは77年の1シーズンだけ。74年にはドジャースで106試合に登板して、何と208.1イニングを投げた。

 マーシャルの他には、メジャーの歴史上で3ケタ登板と救援200イニングのどちらか一方を達成した投手すらいない。肌寒い日でも半袖のまま平気で過ごしていたことや、救援投手はリリーフカーに乗って登場するのが一般的だった時代に、登板の際はマウンドへと駆けていったことも鉄人の印象を強めた。

 マーシャルが決め球としたのはスクリューボールだ。古くは1900年代に活躍した殿堂入り投手のクリスティ・マシューソンやカール・ハッベルも得意とした球種だが、マーシャルのエクスポズ時代にGMを務めたジム・ファニングは、マーシャルのスクリューボールを「これまでに見た中で最高」と評している。
 
 このスクリューボールだが、現在のメジャーで投げている投手はほとんどいない。確たる証拠はないが、リリース時に右腕を反時計回りに捻る(右投手の場合)ためか、腕やヒジに負担がかかりすぎるという意見が出て、姿を消していった。おそらく、持ち球としている現役投手は、今年4月にメジャーデビューしたブレント・ハニーウェルJr.(レイズ)くらいだろう。

 マーシャルから見て、ハニーウェルJr.は孫弟子に当たる。80年代に大学でコーチをしていた時、マーシャルはそこの学生の一人、歳の離れたいとこ、ブレント・ハニーウェル・シニアにスクリューボールを教えた。ハニーウェル・シニアはマイナーリーグでキャリアを終えた後、この球種を息子のハニーウェルJr.に伝授した。

 なお、ハニーウェルJr.は18年のトミー・ジョン手術を皮切りに、これまでに4度も腕にメスを入れている。メジャーデビュー自体も、マイナーリーグで最後に登板した17年以来、約1300日ぶりとなる公式戦での登板になった。これがスクリューボールを用いる影響なのかは分からないが、今後も再び故障に泣かされるのか、それとももはや絶滅危惧種になったスクリューボールの使い手として、メジャーでのキャリアを築いていくのか。“鉄人”マーシャルの孫弟子として、後者になることを期待したい。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
 
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