プロ野球

ハンカチ王子が高校からプロ入りしていたら?甲子園で見せた“投球スタイル”が斎藤佑樹の野球人生を変えた

西尾典文

2021.10.06

甲子園で“ハンカチフィーバー”を巻き起こした斎藤。今季限りで引退を発表した。写真:産経新聞社

 10月1日、日本ハムファイターズは斎藤佑樹が今シーズン限りで引退することを発表した。プロ11年間の成績は15勝26敗、防御率4.34。ここ数年は故障に苦しんだこともあり、4球団競合でのドラフト1位選手としては寂しい数字という印象は否めない。大学に進まずに高校からプロ入りした方が活躍できたのではないかという声も聞こえてくる。では実際のところ高校、大学時代のリアルなドラフト候補としての評価はどうだったのか。当時から斎藤の投球を多く見てきたスポーツライターの西尾典文氏に振り返ってもらった。

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 斎藤のピッチングを初めて見たのは2005年5月4日に早稲田実のグラウンドで行なわれた練習試合だった。この日のお目当ては対戦相手である鹿児島商の木佐木聖也(元フェデックス)で、斎藤のことは存在も知らなかったが、ドラフト候補と見られていた木佐木と変わらないボールを投げていたことをよく覚えている。

 この時の最速は139キロと2年の春にしては十分なスピードがあり、翌年チェックすべき存在として斎藤の名前は確かにインプットされた。この年は10月の都大会の国学院久我山戦、11月の明治神宮大会の岐阜城北戦と駒大苫小牧戦でも斎藤を見る機会はあったが、ストレートは常に140キロ前後をマークするものの凄みがあるわけではなく、大学で実績を残してからプロ入りを目指すのが妥当だと感じ、翌年春の選抜でもその印象は変わらなかった。
 
 斎藤の評価を大きく見直したのは、夏の甲子園大会2回戦の大阪桐蔭戦だ。後にチームメイトとなる中田翔(巨人)から3三振を奪った試合として今でも取り上げられることが多いが、1回戦で11点を奪った強力打線を相手に内角を突く強気なストレートで12奪三振、2失点完投という見事なピッチングを見せている。

 その後の甲子園での活躍と"ハンカチフィーバー"は改めて説明するまでもないだろう。斎藤がこの大会でマークした最速は149キロ。延長戦の試合終盤にも145キロを超えるストレートを投げ込んでいた。甲子園での活躍とこれだけのスピードを考えると、高校からのプロ入りを選択していれば1位で指名された可能性は極めて高い。ただ、際立った活躍は甲子園の短い期間だったということと、身体的なスケールの無さなどを考えると田中将大(楽天)、前田健太(ツインズ)、増渕竜義(元日本ハム)、大嶺祐太(ロッテ)、吉川光夫(日本ハム)などと比べると評価は下だと考えるのが妥当だろう。
 
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