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プロ野球

ドラフト戦線に突然現れた“無名の155キロ右腕”、柴田大地が辿った波瀾万丈すぎる球歴【前編】

矢崎良一

2021.10.07

実力派投手がひしめく今年のドラフト。そのなかにあって柴田の存在はにわかに注目度が増している。写真:徳原隆元

実力派投手がひしめく今年のドラフト。そのなかにあって柴田の存在はにわかに注目度が増している。写真:徳原隆元

 野球選手にとっての“運命の日”。プロ野球ドラフト会議が、10月11日に開催される。

 今年は風間球打(ノースアジア大明桜)、小園健太(市立和歌山)、森木大智(高知)の高校生三羽ガラスが1位指名候補として注目を集めている。だが、こうした誰もが名前を知っている選手だけでなく、あっと驚く“隠し球”の発掘も、各球団スカウトの腕の見せ所だろう。

 ドラフトまで1週間を切ったまさに最終段階。社会人野球の強豪・日本通運に突然現れた無名の155キロ右腕が、にわかに注目を集め始めている。

―――◆―――◆―――

「日通(日本通運)にムチャクチャ球の速いピッチャーがいる。秋のドラフトの隠し球らしい」

 そんな情報(噂話?)を耳にしたのは今年の春先のことだ。

 情報は本当だった。5月のとある日のオープン戦。日本通運が8回の守備に就くと、見慣れない投手がリリーフとしてマウンドに上がった。躍動感のあるオーバーハンドから、ときおり声を挙げながら力強く腕を振り、伸びのあるボールを投げ込んでくる。コントロールにはバラつきがあったが、ストレートはセットポジションからでもほとんど140キロ台後半を計測。そしてMAXはなんと155キロを叩き出した。

 この試合を観戦していた人がネット裏から撮影した映像がYouTubeで拡散され、熱心なファンとプロのスカウトの注目を集めることになった。直後に行なわれた社会人野球東北大会、予選リーグのトヨタ自動車東日本戦で、彼は9回から登板。1イニングを無失点に抑えている。

 もともと社会人野球に関する情報は、高校野球などと比べると格段に少ない。慌ててチームのHPをチェックした。

 日本通運の柴田大地投手。右投げ右打ち。身長180センチ。日体大卒。入社2年目……。たしかに今年がドラフト解禁年になる。だが、その存在はまったくと言っていいほどの“無名”。野球雑誌などを見ても、なかなか名前や記録が出てこなかった。

 それもそのはず。この東北大会が、彼にとって5年10か月ぶりとなる公式戦での登板だったのだ。大学時代の記録は、公式戦登板ゼロ。4年生になる春に右肘の内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を行ない、そこから1年半以上もリハビリに費やしてきた。この春、実戦のマウンドに復帰したばかりだという。

 もう少し遡って高校時代まで調べてみると、ポツポツと足跡が見えてくる。
 
 日体荏原高校3年の夏。東東京大会で2試合を無失点で勝ち上がり、4回戦でこの大会に準優勝した日大豊山と対戦。豊山のエース吉村貢司郎(国学院大―東芝)と投げ合い、3-5で敗れている。

 だが、このときの背番号は10番。ということは、エースは別の投手で、柴田は2番手以下ということになる。いったいどんな球歴を経て今に至ったのだろう?

 この“無名”投手の足跡を、彼に関わった多くの人の証言で追いかけてみた。

 日体荏原で監督を務める本橋慶彦は、取材を申し込むと、「え? 柴田を取り上げてくれるんですか?」と驚きつつ、嬉しそうに高校時代のことを話してくれた。

「あいつ、なんか応援したくなるヤツなんですよ」

 本橋はしみじみと言う。それは、マウンドに上がった時の柴田の立ち振る舞いから生まれる感情だ。

 本橋はよく部員たちに「他人(ひと)に勇気を与えられるような選手になれ」と話していた。その言葉を実践していたのが柴田だった。一球一球声を出し、「打ってみろ」とばかりに気迫を漲らせてボールを投げ込む。ピンチになっても下を向かず、野手に声を掛け鼓舞する。打ち取ったら全身でガッツポーズ。だから後ろを守る野手だけでなく、ベンチにまで活気が生まれて来る。

「『お前、そんなに凄いピッチャーだったっけ?』と思うくらい雰囲気があるんです」と本橋は笑う。だが、そういう姿を見る機会は、あまり多くはなかった。試合で投げるよりも、走ったり、トレーニングをしている時間のほうが長かったからだ。
 
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部員100人を超えるチームでも群を抜いていたポテンシャル

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