プロ野球

【セ・リーグCS展望】攻守ともにヤクルトが一歩抜けるも隙はアリ。阪神は機動力、巨人はパワーと守備で挑むべし<SLUGGER>

藤原彬

2021.11.05

新進気鋭の奥川(左)巨人・阪神両軍ともに大きな苦手はなく、今季不振だった菅野(右)もヤクルトと阪神にはむしろ好相性。一方、ガンケル(中)はヤクルトには強いが巨人に弱く、ファーストステージでの起用は危険? 写真:金子拓弥(奥川)、徳原隆元(ガンケル)、山手琢也(菅野)

 いよいよ11月6日から、クライマックスシリーズが始まる。激しいデッドヒートが繰り広げられたセ・リーグは6年ぶりの優勝を果たしたヤクルトへの挑戦権を懸けて、まず阪神と巨人が激突する。3チームの戦いを、攻守両面における強みと弱みを整理しながら展望しよう。

■オフェンス
 得点数はヤクルト(625)がリーグで頭ひとつ抜けているが、3球団の優劣を測るには本拠地の特性を考慮しなければならない。基本的に神宮球場と東京ドームは打者有利だが、甲子園は不利だからだ。

【本拠地での平均得点/本拠地以外での平均得点】
ヤクルト 4.29(1位)/4.43(1位)
阪神   3.44(5位)/4.05(3位)
巨人   4.12(2位)/3.64(5位)
※()内はリーグ順位

 ヤクルト打線は、本拠地を離れても得点力を発揮。もっとも、東京五輪開催の影響で62試合しか使用できなかった神宮球場で69本塁打を量産するなど、地の利もしっかりと生かしていた。特に山田哲人は34本塁打中17本塁打、オスナは13本中9本を本拠地で記録するなど、打者有利の恩恵を生かしている。当然、ファイナルステージが全試合ホーム開催なのは大きなアドバンテージだ。
 
 打順別では6~8番打者も打率.256以上で、ベンチには代打打率.366を誇る川端慎吾や短期決戦で驚異的な強さを見せる内川聖一も控える。打線全体でリーグベストの四球率9.5%を記録した点も見逃せず、同1位の村上宗隆(17.2%)や山田(13.1%)だけでなく、中村悠平(10.3%)らも四球を多く獲得して、打線につながりを作った。

 一方、阪神は本拠地とそれ以外の球場で得点力に明確な差がある。今季の121本塁打のうち、甲子園での62試合では43本のみ。マルテが10本を放り込んだが、他に2ケタへ乗せた打者は皆無だ。それだけに、巨人とのファーストステージではリーグ最多の114盗塁を記録した機動力をうまく使いたい。

 ルーキーで盗塁王に輝いた中野拓夢はもちろん、昨季まで2年連続でタイトルを手にした近本光司も足が武器だが、後者はシーズン終盤に太腿裏を痛めて欠場が続いた影響が気になる。9月以降に打線は湿っていたが、ファイナルステージへ進めば13試合で17本塁打を量産した神宮を舞台に佐藤輝明、大山悠輔、マルテ、サンズの「20発カルテット」が火を噴くかもしれない。