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「最も価値がある」とは何か。大谷翔平のMVPノミネートから見る日米の“価値観”の相違

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.11.09

MVP投票トップ3に入った大谷。もはや驚きもないが、彼のノミネートもまた日米の違いの一つと言えるかもしれない。(C)Getty Images

 あまりに"当然"すぎるアナウンスがなされた。全米野球記者協会(BBWAA)は現地時間11月8日、最優秀選手(MVP)とサイ・ヤング賞の投票上位3人を発表し、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)がア・リーグMVP候補に選出された。受賞となれば、日本人では2001年のイチロー以来となる快挙であるが、ここまでの流れを鑑みれば、争点となるのは「満票か否か」に絞られている。 

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 今年のMVP上位3人の顔ぶれは以下の通りだ。 
<ア・リーグ> 
●大谷翔平(エンジェルス):投手&DH 
●ブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ):一塁手 
●マーカス・セミエン(ブルージェイズ):二塁手 

<ナ・リーグ> 
●フェルナンド・タティースJr.(パドレス):遊撃手/外野手 
●ブライス・ハーパー(フィリーズ):外野手 
●ホアン・ソト(ナショナルズ):外野手 

 実は、この6人の中で打率・本塁打・打点のいわゆる打撃三冠を獲得したのは、ゲレーロJr.とタティースJr.の2人しかいない。しかも、ポストシーズンに出場した選手も一人もいない、というのは"日本的"に言えば驚きではないだろうか。 
 
 1980年以降、日本プロ野球の最優秀選手はのべ82人選出されているが、優勝チーム以外からのMVPは計11人しかいない。その中には三冠王を獲得した落合博満(1982・85年)、松中信彦(2004年)らがいて、日本プロ野球歴代最多本塁打を放ったバレンティンが唯一の最下位チームからの選出(2015年)ということもあったが、いずれも球史に残る活躍をしてはじめて、MVP選考の土台に乗った感もある。それだけ、日本においては「優勝」というファクターが根強い。 

 一方で、先に述べた通り、大谷を含めてMVP投票トップ3の選手たちは、いずれも優勝とは無縁だった。特に、ソトが所属しているナショナルズは今季ナ・リーグ東地区最下位、メジャー全体でも勝率ワースト5位に沈んでいる。しかもタイトルホルダーでもない。それでも、これだけ好意的な評価を受けているのは、メジャーのMVP投票において、チームの勝利はそれほど重要視されていないからだ。 

 数十年前までは、優勝チームや、勝利に貢献している指標として打点が重視されていた時期もあった。しかし、「Most Valuable Player」における「価値のある」部分の定義が検証されていき、今では"突出した"パフォーマンスを残した個人を評価する風潮となっている。それはタイトル云々ではなく、「いかに高いWARを残したかどうか」という形だ。 
 
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MVPは「WAR1位」賞なのか