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【MLB不正投球問題の本質:前編】シーズン中の規制強化が巻き起こした波紋<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.01.02

6月から始まった審判の異物チェックに不満顔のマックス・シャーザー(現メッツ)。シーズン途中の規制強化に異論を唱える投手も多かった。(C)Getty Images

6月から始まった審判の異物チェックに不満顔のマックス・シャーザー(現メッツ)。シーズン途中の規制強化に異論を唱える投手も多かった。(C)Getty Images

 2021年6月に発覚した当時、球界で大きな話題を集めていた「不正投球」問題。投手がボールに粘着物質を付着させることはそれまで黙認されていたが、回転数向上のため“悪用”するケースが目立ったことから、MLB機構が規制を強化。シーズン途中での措置に投手たちは一斉に猛反発した。だが、彼らは本当に“被害者”なのか。事態を広い視野で捉えてみよう。

※スラッガー2021年9月号より転載(時系列は7月16日時点)

 MLB機構が粘着物質を使ってスピンレートを上げようとする投手への「取り締まり強化」を実施して2日目の6月22日、当時ナショナルズにいたマックス・シャーザー(現メッツ)は報道陣を挑発した。その夜、彼は最初に審判から身体検査を受けた時に不満を露わにし、フィリーズのジョー・ジラルディ監督からの要求によってマウンドで2度目の検査を受けた際には激怒した。

「これはマンフレッド・ルールだ」。その夜、シャーザーは吐き捨てた。「彼に訊けよ」

 そこで、私は実際にそうしてみた。もっとも、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドが私の電話に出るとは思っていなかった。投手がボールに異物をつけることを禁じたルールを強化するのが遅すぎたとして、私はMLB機構とマンフレッドをずっと批判してきた。機構が動かなかったことで、投手たちは不正に手を染める許可を得ていたも同然だった。その結果、三振がゲームを支配するようになった。だが、マンフレッドは私に折り返し電話をかけてきて、私たちは話した。その時に彼が言った3つの単語が頭に残っている。

「我々は警告したはずだ(We warned you)」
 
 MLBがすべての投手への検査を始めたのは6月21日からだが、秘密裏に事を進めていたわけではない。スプリング・トレーニングの時点から、MLB機構は2021年シーズン最初の2ヵ月間で異物使用の実態に関する証拠を捜査すると発表していた。スピンレートの向上がもたらす影響や、かつてないほど効果的な形でボールに異物を付着させる行為が蔓延しているとの報告に機構が懸念を抱いていたことを、投手たちは知っていたはずだった。

「3月に通達を送った時点で、我々がこの問題にはいずれ規律を持って臨まなければならないと考えていたことは、かなり明確だったはずだ」と、マンフレッドは私に言った。「その後、我々は6月まで何もしなかった。その期間を私がどう捉えているかって? 投手たちが問題を自己解決するための猶予期間だと考えている」

 その代わりに投手たちは、MLBがリーグ全体にわたる広範囲の取り締まりを行うことを発表した6月初旬まで粘着物質を使い続けた。慌てて新しいルールに適応しなければならないことに、多くの投手は不満を募らせた。一方、スピンレートはその後1ヵ月で実際に下降した。
 

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