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10戦6本塁打の大爆発。引退の危機に立たされた36歳ベテランが復活したのは“ライバル”の助言?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.06.14

名門の球団新記録を塗り替えたカーペンター。“終わった男”は一体どのように変貌を遂げたのだろうか。(C)Getty Images

「突然変異」との形容だけでは物足りないほどの変貌ぶりである。

 ヤンキースのマット・カーペンターは現地6月12日、本拠地で行われたカブス戦で2本塁打を含む3安打7打点の大暴れでチームの勝利に貢献した。もっとも、彼が凄いのはこの試合だけではない。

 5月26日にヤンキースと契約したばかりの36歳のベテランは、今季出場わずか10試合(24打数)で6本塁打の大爆発。ヤンキース入団後最初の10試合で6発は球団新記録という快挙で、文字通り歴史的な"スタートダッシュ"となった。

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 カーペンターはカーディナルス時代にオールスター選出3回の実績を誇り、2018年は球団新記録の6試合連続弾を含め年間36本塁打を打ったこともある。しかし、過去2年は打率1割台と低迷、計180試合で本塁打わずか7本だったことを考えれば、今季の猛打ぶりはより際立ってくる。一体彼に何があったのか。

 地元紙『ニューヨーク・ポスト』の取材に応じたカーペンターが明かしたのは意外な理由だった。
 
 過去2年の不振は年齢による身体的な衰えが理由とする向きが多かった。しかし本人は「自分のスウィングが何かおかしかった。フィジカルじゃなく、メカニクスの問題だった」と振り返る。

 現状を打破するためには"新しい視点"が必要だ。そう考えたカーペンターが藁にもすがるような思いで意見を求めたのが、同じ左打者で10年にMVPを獲得したこともあるジョーイ・ボトー(レッズ)だった。ボトーとカーペンターはナ・リーグ中地区で長くしのぎを削ってきた関係であり、言わばライバルにあたる。それでも、カーペンターは昨季37歳ながら36本塁打を放って復活を遂げた先輩に頭を下げ、オフにともにトレーニングを行った。

 そこでカーペンターはボトーの特殊な打撃練習に目を奪われた。ボトーが行っていたのは、球速と回転数を最大値まで上げたピッチングマシーンを使い、打球速度を向上させる練習だった。

 ボトーとの練習だけにとどまらず、強打者JD・マルティネス(レッドソックス)らを指導した打撃コーディネーターの下を訪れたり、元チームメイトでシルバースラッガー賞4回のマット・ホリデイにもアドバイスを求めた。ホリデイからは、右足の開きが早すぎることでミスショットしていると指摘されたという。

 マイナー契約で加わったレンジャーズでは開幕ロースター入りを逃し、3Aでプレーを続けたが5月19日自ら解雇を求めて退団。1週間後に加わったヤンキースで、生まれ変わった打撃を披露するチャンスを得た。

 多様な意見を取り入れ、かえって元のいいところまで崩れてしまう選手もいる。しかし、カーペンターの今季の活躍を見ると、最高の形で結実していることが見て取れる。故障者が続出したヤンキースの救世主になっているベテランの反攻は、果たしてどこまで続くだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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