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プロ野球

【助っ人選手の履歴書:M・シューメーカー①】まさかのドラフト外から這い上がった苦労人右腕“下剋上”の軌跡<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.25

長い手足から繰り出されるスプリッターを武器に、シューメーカーは巨人の先発の一角として活躍している。写真:産経新聞社

長い手足から繰り出されるスプリッターを武器に、シューメーカーは巨人の先発の一角として活躍している。写真:産経新聞社

 2008年のMLB新人ドラフトでは、実に1504人もの選手が指名を受けた。

 だが、その中にマット・シューメーカーの名前はなかった。

「ドラフトされると思っていたし、いくつかのチームから指名するとも言われていた。だから、控えめに言ってもすごく悲しかったし、つらかった」。今季から日本に活躍の場を移したシューメーカーは当時を振り返ってそう語る。

 当時、イースタン・ミシガン大で活躍していたシューメーカーはドラフト当日、自宅で父と一緒に自分の名前が呼ばれるのを待っていた。

「家のリビングでノートパソコンを開けながら(ドラフトを)見ていた。プロに入るのがずっと夢だったし、父さんは子供のころからずっとコーチをしてくれて、僕がメジャーリーガーになることに一緒に懸けてきた。だから、一緒に指名される瞬間を分かち合おうと思っていたんだ」
 
 だが、2日間にわたった会議で、彼の名前が読み上げられることは最後までなかった。最後の指名がアナウンスされた後、父とシューメーカーは黙って抱き合ったという。

 昨季までメジャー通算46勝を挙げ、これまでに稼いだ年俸の総額は約2000万ドル。シューメーカーは間違いなく成功者と言っていい。だが、彼のキャリアはその始まりからして波乱万丈だった。

 ドラフト後、数日間は悲しみに打ちひしがれていたシューメーカーだったが、気を取り直して大学生選手が集まるサマーリーグに参加。そこで、エンジェルスから声をかけられた。エンジェルスからすれば、言い方は悪いがマイナーの人員合わせに近い形だった。契約金はわずか1万ドル。当初、3万ドルを要求したシューメーカーに対し、エンジェルスのスカウトが「3万ドルは高い」と答えた、というエピソードも残っている。

 ルーキーリーグから1A、1A+、2Aと順調にマイナーの階段を駆け上がったシューメーカーだが、3Aで大きな壁にぶつかる。12年は11勝を挙げたものの、防御率は5.65と打ち込まれた。

「自分に力があることは分かっていたけど、適応が必要だった。家族と離れ離れで移動も大変だし、本当につらかった」
 

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