専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
高校野球

「間違いなく1位で消えますね」――今夏に声価を高めた高松商・浅野翔吾。プロスカウトの“疑念”を打ち砕いた身体能力

西尾典文

2022.08.24

大会を通じて打率.700、OPS2.600と打ちまくった浅野。彼の打撃は単なる力任せなものではないから驚きだ。写真:塚本凜平(JMPA代表撮影)

大会を通じて打率.700、OPS2.600と打ちまくった浅野。彼の打撃は単なる力任せなものではないから驚きだ。写真:塚本凜平(JMPA代表撮影)

 仙台育英(宮城)の東北勢初となる優勝で幕を閉じた夏の甲子園。数多の選手が活躍を見せた今大会において、最も強烈なインパクトを残した選手と言えば、高松商(香川)の浅野翔吾になるだろう。チームは準々決勝で近江(滋賀)に敗れたが、3本のホームランを放つ大活躍で甲子園を湧かせた。

 改めて今大会の浅野の打撃成績をまとめると以下のようになった。

・対佐久長聖戦
6打席(4打数)、3安打、2本塁打、4打点、1四球、1死球
四球、三邪飛、右中本、左本、死球、左2

・対九州国際大付戦
4打席(2打数)、1安打、1四球、1死球、1盗塁
二安、死球、四球、右飛

・対近江戦
5打席(4打数)、3安打、1四球(申告敬遠)、1盗塁
左2、中本、左安、申告敬遠、左飛

・大会通算
15打席(10打数)、7安打、2二塁打、3本塁打、6打点、5四死球、2盗塁
打率.700、OPS2.600(出塁率.800+長打率1.800)
 
 15回打席に入り、凡打はわずかに3回。放ったヒット7本のうち5本が長打で、3本がホームランと、まさにこれ以上ない活躍だった。近江戦の第4打席では1死一、二塁の場面から申告敬遠されたが、これは長い高校野球の歴史でもそうそう見られるものではなかった。大会前から「世代ナンバーワン打者」としての呼び声は高く、対戦相手からも相当な研究をされ、厳しくマークしてくるなかで、ここまでの成績を残したというのは見事というほかない。

 何よりも浅野の大きな長所はボールを遠くへ飛ばすコツを心得ていて、ホームランの形にバリエーションがあるという点だ。

 昨夏も含めて彼は甲子園で4本のホームランを放ったが、打ったボールの内訳は変化球が2本、ストレートが2本。単純なパワーという意味ではやはりストレートに対する強さがよく表れている。

 今夏も佐久長聖戦では、外寄りのボールをしっかり押し込んで右中間の最深部まで運び、近江戦では、好投手・山田陽翔の146キロのスピードに力負けせずにバックスクリーンに叩き込んだ。金属バットとはいえここまでストレートをセンターから逆方向へ飛ばすのは簡単ではない。一方で変化球はうまく体を残して鋭く回転し、ヘッドを利かせて強く引っ張れている。右打者はカーブ、スライダー系のボールを打つときは逆らわずに逆方向とよく言われるが、浅野の場合はそのような軽打ではなく、ホームランにできるというのは長距離打者としての高い素質をよく示している。

 もうひとつ特筆すべきは、ホームランにした際のカウントだ。

 先述の山田から放ったホームランは1-1からのボール球だったが、佐久長聖戦での2本はいずれも2ストライクと追い込まれてから放ったものだった。どのカテゴリーにおいても2ストライク後の打率というのは大きく下がるもので、それは高校野球でも顕著だ。

 そうした多くの打者が苦手とする状況でも、ヒットではなくホームランにしてしまうというのは、基本的なスイングの強さ、ヘッドスピードが並外れている証と言えるだろう。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号