プロ野球

セ・リーグ新人王に本当にふさわしいのは大勢でも湯浅でもない?“ダークホース”髙橋宏斗の圧巻スタッツに迫る<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.11.24

大勢(左上)と湯浅(左下)が本命視されるセ新人王レース。だが、真の本命と呼ぶべきは髙橋(右)では?写真:徳原隆元(大勢)、滝川敏之(髙橋)、産経新聞社(湯浅)

 11月25日の『プロ野球アワード』で発表される新人王。セ・リーグでは、大勢(巨人)と湯浅京己(阪神)の両リリーフ投手が賞レースのトップを走る、とされている。

 ルーキーながら開幕からクローザーを任された大勢は、いきなり史上初のプロ初登板から7試合連続セーブを記録。ナチュラルにシュートする最速159キロの剛速球を武器にその後も好投を続け、最終的には新人では史上4人目の30セーブを達成した。

 一方、独立リーグ出身の湯浅は高卒4年目にして初の開幕一軍を勝ち取り、4月から勝利の方程式に定着。7月2日の中日戦以降は28試合連続無失点で終え、45ホールドポイントを記録して最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。

 クローザーとセットアップという違いはあれど、大勢と湯浅はどちらも新人王に輝いてもおかしくない投球を見せたことは間違いない。だが、実はこの2人をも凌駕するほどの好成績を残した投手がいる。高卒2年目の髙橋宏斗(中日)だ。
 
 規定投球回には届かず、6勝7敗と負け越してるせいか、大勢と湯浅と比べて印象度は薄いかもしれないが、116.2イニングで防御率2.47。最速160キロ近いストレートと切れ味抜群のスプリットで打者を圧倒し、9イニング平均の奪三振率は100イニング以上を投げたセ・リーグ23投手で唯一10を超えている(10.34)。

 7イニング以上投げて自責点2以下のハイクオリティ・スタート(HQS)を19先発中7回も記録するなど安定感も抜群。にもかかわらず、その7回のうち勝ち星がつかなかったケースが5回(3敗)もある。これはひとえにリーグ最低の得点力に苦しんだ打線の援護不足によるもので、「普通の」チームなら2ケタ勝利に到達していてもおかしくなかった。

 中10日前後と間隔を空けて登板することが多かったとはいえ、それでも116.2イニングは、大勢(55.0)と湯浅(57.0)の倍以上。役割の違いはあるとはいえ、規定投球回に満たずとも「労働量」は十分と言えるだろう。

 実際、どれだけ勝利に貢献したかを示す総合指標WARは3.6で、大勢(1.2)、湯浅(2.0)を大きく上回っている。ちなみにこのWAR3.6という数字は、同じ先発投手で比べてみても伊藤将司(阪神)の3.3、高橋奎二(ヤクルト)の3.2、大貫晋一(DeNA)の3.0をも上回る。繰り返しになるがまだ20歳、高卒2年目でこれだけの活躍を見せたことはもっと評価されるべきだろう。

 巨人、阪神、中日はいずれも負け越しており、3人とも「優勝に貢献した」というボーナスポイントをつけることはできない。となれば、後は純粋に成績勝負。そう考えれば、最も新人王にふさわしいのは髙橋だろう。

 下馬評を見る限り、「賞レース」としては大勢か湯浅が優勢なのかもしれない。仮に新人王を受賞できなかったとしても、高橋がどれだけの票を得られるのか注目したい。

構成●SLUGGER編集部

※データ提供:株式会社DELTA