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スーパースターの移籍が破談になる“大どんでん返し”が19年前にもあった!幻に終わったA-RODの“世紀のトレード”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.12.24

A-ROD(左)とラミレス(右)の“世紀のトレード”は球団間では合意に達したのだが……。(C) Getty Images

 ジャイアンツ入りが決まっていたカルロス・コレアの突然の契約破棄とメッツとの電撃契約は、アメリカで大きな話題となっている。メディカルチェックの結果にジャイアンツが疑念を抱いたことで入団会見が3時間前になって突如キャンセル、それからわずか半日で急転直下のメッツ入りという流れは球界全体を驚かせた。

 これほどの大物選手の移籍が成立直前で白紙に戻るなど前代未聞……と思う人もいるかもしれないが、実は19年前にも同じような事件が起きている。そして、この時もまた"主役"はドラフト全体1位指名でプロ入りした大型ショートストップだった。

 2003年12月16日、レンジャーズとレッドソックスは"世紀のトレード"に合意した。5ツールを兼ね備えた遊撃手で、その年、初のMVPに輝いた"A-ROD"ことアレックス・ロドリゲスがレッドソックスへ、5年連続でシルバースラッガーを獲得していた球界屈指の強打者マニー・ラミレス、そして当時マイナーにいた若手左腕ジョン・レスターがレンジャーズへ移籍するトレードだ。

 当時のA-RODは、現在のコレアをはるかに上回るスーパースターだった。1993年、ドラフト全体1位でマリナーズに入団し、早くも翌年わずか18歳でメジャーデビュー。96年に首位打者を獲得、98年には史上3人目(当時)の40本塁打&40盗塁を達成した。2000年オフに10年2億5200万ドルという前代未聞の超大型契約でレンジャーズに移ってからは3年連続で本塁打王に輝き、前述したように03年は初のMVPを受賞。28歳と、年齢的にも脂の乗り切った時期だった。
 しかし、A-RODの加入以降、レンジャーズは3年連続地区最下位と低迷。A-RODの超巨額契約が重荷になって、チームの戦力構成が著しくアンバランスになっていた。このため、レンジャーズのオーナーは密かにA-RODの放出を模索していた。

 一方、レッドソックスはラミレスの気まぐれな行動に振り回されていた。00年オフに8年1億6000万ドルで加入し、02年に首位打者を獲得するなど期待通りの打棒を発揮していたラミレスだが、大事なヤンキース戦を仮病でサボるなどの問題行動が多く、本人も何かとプレッシャーの多いボストンから出たいと周囲に漏らしていた。

 さらにレッドソックスは、生え抜きスーパースターのノマー・ガルシアパーラの処遇でも難題を抱えていた。A-ROD、デレク・ジーター(ヤンキース)と並ぶ「三大ショートストップ」の一角として絶大な人気を集めていたガルシアパーラは04年オフにFAとなる予定だったが、球団との契約延長交渉が暗礁に乗り上げていたのだ。A-RODを獲得すれば、2つの問題を一挙に解決できる――レッドソックスはそう考えた。

 利害が一致したレンジャーズとレッドソックスはトレード交渉に臨み、すぐさま合意に至った。A-ROD本人もレッドソックス移籍を喜んで受け入れた。トレードが正式に成立した暁には、ガルシアパーラをホワイトソックスへ放出する計画も進められていた。
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“世紀のトレード”が破談になった理由とは…