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「まだまだ若い選手の壁でいたい」35歳の秋山翔吾が“秋山組”の自主トレで見せた「若さ」と「指導力」<SLUGGER>

岩国誠

2023.01.22

打撃職人らしく黙々とバットを振り込む秋山。だが、今回の自主トレで見せたのは選手としての顔だけではない。写真:岩国誠

 昨季途中に日本球界復帰を果たした秋山翔吾(広島)は、今年も静岡県下田市営総合グラウンドでの自主トレから1年をスタートさせた。この場所での自主トレはすでに7年目だ。

 9時から始まる全体練習はランメニューのほか、体幹強化、キャッチボール、内野ノックと続いて、最後には約2時間の打撃練習に打ち込む。連続ティーやロングティーなど5ヵ所をローテーションで回り、各々がひたすらボールを打ち込んで終了となる。

 今回は1月中旬に広島へと移動するため、例年より1週間早い1月5日からスタートし、13日まで9日間にわたって取り組んだ。昨年は雨が多かったが、今年は1日も雨が降ることなく、順調にメニューを消化。最終日間際には、近くにあるサンドスキー場を使って、下半身をいじめぬいた。

「今日の練習を見てもらったら『元気だな』って思ってもらえるんじゃないですか?」

 約4時間ノンストップで行うその内容は、一見、去年と変わらないように見える。しかし、秋山によると、その質には変化を加えているという。
 
「『(メジャーで)1本くらいホームラン打ちたいな』とか、『振り負けないようにしないとな』と思って、去年は体重を増やしましたし、技術(の追求)に寄り過ぎてしまったかなと思っています。

 こういうスイング軌道がいいんじゃないかと、1本1本キレイにバットを振る意識が強かったんです。ただ去年はケガもあったりしたので、今年は体力強化にフォーカスして、シーズン中に技術と向き合えるだけの精神的余裕や、体力的余裕が持てるように、数の方にフォーカスしている感じですね」

 去年はメジャー最終年を悔いなく戦うために、この時期に大幅な打撃改造に着手。強いライナーをライト方向へ飛ばすために、ミートポイントを前に置き、バットの重心も先端の方に変え、体重も増やした。自分のスタイルを貫くのではなく、メジャーに適応するスタイルを新たに作る大きな挑戦だった。

「自分が表現したいプレーっていうものが、アメリカで求められていたものと、こっちに戻ってきてからやらなきゃいけないことが多分違うんですよね」

 新しい挑戦で評価を勝ち取れず、昨年3Aでプレーすることになった時点で、操作性重視だったもともとのバットに戻した。そして現在、動ける身体を作ることと、故障を抑止することを考え、体重を3kg落としている。それもあってか、昨年に比べて全体的に動きに軽快さを感じさせた。
 
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