侍ジャパン

“絶対に負けられない戦い”は「気負い過ぎ」。ダルビッシュ有が訴える代表戦に挑むマインド「原点を分かってほしい」【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.02.25

宇田川のブルペンピッチを眺めているダルビッシュ。その表情はいたって自然体そのものだ。写真:梅月智史

 代表戦について考えると、どうしても「プレッシャー」や「責任」という言葉を連想してしまう。文字通り国を代表して戦うのだから当然と言えば、当然である。

 だからこそ、ダルビッシュ有(パドレス)の言葉は、新鮮に感じた。来る3月8日に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた侍ジャパンの代表合宿を前にし、「気負いすぎ。戦争に行くわけじゃないですし」とキッパリと言ってのけたのだ。

 メディアの煽りでも「絶対に負けられない戦い」と言われたりもする代表戦。それをあっさりと「もしも、マイアミでアメリカに負けたとしても『日本帰れない』というマインドでいてほしくない」と彼は言うのだ。

 目下、宮崎で開催中の侍ジャパン合宿においても、ダルビッシュに気負う素振りはない。むしろ当人が「いつも通り」と言うように物腰の柔らかい態度は、年齢の離れた若手投手陣を中心にチームの団結を深めるのに役立っている。

 この合宿中では、ダルビッシュのリラックスしたマインドが分かる興味深い出来事があった。巷でも話題となった「宇田川会」だ。

 育成から大出世で侍ジャパンへ選出された宇田川優希(オリックス)は、今合宿を前にしたオリックスの春季キャンプで、中嶋聡監督から減量の厳命を受けていた。ただでさえ、人見知りをする24歳の右腕は代表という大舞台に萎縮し、「正直気疲れも出ています」と漏らすほどに精神的にすり減っていた。
 
 そんな宇田川に気を遣ったのが、ダルビッシュだった。

「1年前までは育成で、そこからいきなり侍ジャパン。それなのに、ここでも減量だとか、ボールがどうだとかと言われてしまう。それだとあまりにも一人の人間が背負うには大きすぎる。だからそれは嫌だった」

 そう語ったベテラン右腕は、休養日だった20日に実施された投手会の輪の中心に宇田川を持っていき、気楽に振る舞うように促したのである。

 この日以降、見違えるように表情が明るくなった宇田川。ブルペンでも力強いボールを投げるようになり、23日の投球練習後には「楽しい」と声を上げるほど、前向きな表情を見せた。
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野球を楽しむ――。この代表戦に向けた言葉の意味