侍ジャパン

【WBCインタビュー:前編】「大谷と村上が本塁打を打てないなら諦めるしかない」橋上秀樹が語るパワー野球の重要性<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.03.06

侍ジャパンの主軸を担う大谷(左)と村上(右)。写真:滝川敏之

 3月9日に開幕を控えた第5回ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)。大谷翔平(エンジェルス)やダルビッシュ有(パドレス)が参加し、3度目の優勝に期待がかかる侍ジャパン。世界の頂点へのカギを、2013年の大会で代表戦略コーチを務めた橋上秀樹氏が語ってくれた。

――まず、今大会の侍ジャパンの第一印象はいかがですか?

 ほとんどの人が納得するようなメンバーが選ばれた、という感じですね。これまで、WBCでは日本人メジャーリーガーが出場できなかったりで、本当の意味でのオールジャパンにはなかなかならなかったんですが、今大会は今までで一番充実した布陣になる可能性が高いですね。

――今回のメンバーならではの特徴は何かありますか?

 野手は比較的パワー系の選手が多い印象を受けますね。今までの日本の国際試合での戦い方は、スモールベースボールと言われることが多かったですが、たとえば大谷翔平(エンジェルス)や村上宗隆(ヤクルト)のように、メジャーに入っても見劣りしないような体格を備えた選手が増えてきて、ある程度パワーで戦えるようになってきているので。

 周東佑京(ソフトバンク)や中野拓夢(阪神)のような足を使える選手もいますが、以前に比べて細かいことを要求されるようなバッターは減ってきている感じはします。バントをするのも、源田壮亮(西武)か捕手陣くらい。世界のパワーに対抗できる日本野球を、ファンもそろそろ楽しみにしているんじゃないかなと感じます。

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――投手陣にもパワーピッチャーがたくさんいて、まさに力と力の勝負を目指している感じがしますよね。

 日本にも160キロを投げる投手がかなり増えてきましたからね。その数字が出ること自体が世界レベルというか、本当に日本の野球も変わってきたという印象を受けますね。

――不安要素を挙げるとしたらどこでしょうか?

 岡本和真(巨人)と山川穂高(西武)が両方とも選出されたのには、少し違和感を覚えます。同じようなタイプの選手を、果たしてどのように使い分けるのか。サードには村上宗隆(ヤクルト)、ファーストには牧秀悟(DeNA)がいて、指名打者には近藤健介(ソフトバンク)もいるので、おそらく2人とも控えになる可能性が高い。DHが使えるオーダーでは、それほど代打を重視しなくても済むので、ここに2つの枠を使うよりは、塩見泰隆(ヤクルト)や近本光司(阪神)のような足も使える外野手を入れた方が良かったと思います。

――外野が4人しかいないこと、また本職のセンターがいないことは、発表当時から話題になっていましたよね。

 おそらく、投手の枚数を予定より1枚増やしたためでしょう。大谷翔平(エンジェルス)やダルビッシュ有(パドレス)に対する投球制限が、メジャー球団からかなり細かいところまで来ているらしいですから。彼らの起用法にそこまで自由が利かないので投手を増やし、その分、外野が割を食ってしまったのでしょうね。
 
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重要なのは大谷の後を打つ3番