侍ジャパン

【WBC】経験豊富な甲斐、臨機応変の中村、打撃の大城――名捕手・谷繁元信が侍ジャパンの捕手運用を占う!<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.03.03

甲斐(右)に中村(左)、大城(中央)と三者三様の持ち味を持つ捕手たちをどう運用すべきか。自身も代表経験を持つ谷繁が切る。写真:梅月智史

 3月8日(日本代表は9日から)に開幕を控える第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、3人の捕手が侍ジャパンに選ばれた。彼らを大会でどう運用していくのか。そして、国際大会で捕手に必要な資質とは? 自身もWBCに出場経験のある名捕手・谷繫元信が語ってくれた。

――今回の侍ジャパンには、甲斐拓也(ソフトバンク)、中村悠平(ヤクルト)、大城卓三(巨人)と三者三様の捕手が選ばれました。谷繁さんから見た3人それぞれの特徴をお聞かせください。

 まず、甲斐の長所は肩が強いこと、それと五輪やプレミア12などで日本代表のキャリアがすでにあることですね。ピッチャーとのコミュニケーションは一番やりやすいんじゃないかと思います。

 中村は、過去2年ヤクルトのリーグ優勝に貢献する中で、状況を見る力というのがものすごくついてきた感じがします。場面に応じていろいろな工夫ができる臨機応変なキャッチャーになってきた、という感じです。

 大城は逆に、捕手としての総合力は2人に比べると少し物足りないですが、バックアップとしては十分かと。打撃に優れているとは言われますが、正直、どのように使われるかは未知数です。

 WBCのような国際試合では、3人の捕手が同じように出場機会を得ることはあまりない。1人か2人をメインにして、3人目はほとんど何か不測の事態が起こった時のための存在になるので、そういった状況に対応できる捕手として見込まれた、という感じでしょうね。
 
――肩では甲斐が一番というお話でしたが、他の2人も盗塁阻止率でリーグ1位になったことがあります。それぞれのスローイングにはどのような違いがありますか?

 中村もセカンドスローに関しては安定感がありますね。昨年は肩というよりも、送球の安定感で昨年盗塁阻止率で1位になったという感じです。大城も20年にリーグ1位でしたが……、捕ってから速いわけでもないし、肩がものすごく強いわけでもないので、あまりスローイングに優れている印象はないですね。

――ブロッキングやフレーミングでは、3人の中で誰が秀でていますか?

 キャッチングは3人ともかなりうまいですよ。ブロッキングに関してもみんな反応がいい。捕るのが厳しいボールが来た時もしっかり反応して、何とか前に落とすことができる。3人ともそういうキャッチャーですね。

――リード面の特色はどうですか?

 甲斐は基本的に、ピッチャー主体に考えるキャッチャーです。もちろん、ピッチャーのスタイルを中心に組み立てつつも、ところどころ自分からバッターの様子を見るようなリードもできる。中村はさっきも言った通り臨機応変で、打者にいろいろと意識させるようなリードができる。

 たとえば、セオリーで言うとここはアウトコースだな、という場面で、あえてインコースに要求したり、この打者はこの球種が見極められていないな、と思うとそのボールを続けさせたりとか、そういうことができるんです。大城はかなりオーソドックスなリードをしますね。
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相手をどれだけ観察して、決断して、投手に要求できるか