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侍ジャパン

3.11登板は「野球の神様」からのメッセージ。佐々木朗希の忘れられない日に見せた快投に指揮官も脱帽「1球に魂を込めて」【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.12

甲斐の構えるミットめがけて目いっぱいに投げ込んだ佐々木。彼の見せた全力投球にファンが酔いしれた。写真:鈴木颯太朗

甲斐の構えるミットめがけて目いっぱいに投げ込んだ佐々木。彼の見せた全力投球にファンが酔いしれた。写真:鈴木颯太朗

 自身にとっての運命的な大一番で、21歳の若武者は躍動した。3月11日に行なわれたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次リーグプールB第3戦で、チェコ代表と対戦した日本代表の先発マウンドに立った佐々木朗希(ロッテ)だ。

 3月11日。この日は多く日本人にとって、そして何よりも佐々木にとって、忘れられない日である。

 今から12年前のこの日、日本は未曾有の危機に苛まれた。宮城県を震源とする大規模な地震が列島を襲った東日本大震災である。多くの人が被災し、大切な人を失った。当時9歳だった佐々木もそうだった。陸前高田市出身だった彼は津波によって、父・功太さん(享年37)と祖父母を亡くした。

 日常は突如として消え去った。キャッチボールを学校のグラウンドには仮設住宅が建ち、河川敷などの空き地で練習するしかなかった。それでも佐々木は周囲の支えを得ながら野球に励み、20年には4球団競合の末にドラフト1位でロッテに入団。その後も着実にスターダムを駆け上がり、昨季には世界記録となる13者連続奪三振と完全試合達成を1試合でやり遂げる離れ業をやってのけ、世界にその名を轟かせた。

 いまや「令和の怪物」と称され、球界で知らぬ人はいなくなった。そんな彼を運命が大一番に導いた。自身にとってWBCデビュー戦となる、このチェコ戦での先発抜擢が決まったのだ。
 
 被災した故郷の想いも背負うマウンド。もともとメディアの前で多くを語るタイプではない。だが、前日に「とにかくチームが勝つこと」と淡々と語った姿に並々ならぬ意気込みが滲み出た。

 当然、指揮官も佐々木の想いは汲み取っていた。試合前の会見で栗山英樹監督は、こう登板に押し出した想いの一端を語った。

「こういう日に先発するということは、野球の神様が朗希に『頑張れ』とメッセージを送っているのだと、僕は思っている」

 はたして、大歓声のこだました東京ドームのマウンドに立った佐々木は、圧巻の投球を見せつけた。初回に中野拓夢(阪神)の送球エラーから1点を失ったが、最速164キロを記録したボール自体は走っていた。

 3回途中66球を投げて降板となった佐々木。8奪三振という数字もさることながら、投球の半分を占めたストレート36球のうち23球が160キロ超えというのは驚きだった。このポテンシャルの高さを再認識させる数字はチェコのパベル・ハジム監督も「本当に素晴らしい投手」と脱帽するところだ。
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