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日本に惨敗も笑顔だったチェコに見た“野球の原点”。ダルビッシュ有も語った「楽しむこと」の重要性【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.13

東京で快進撃を見せつけたチェコ。その躍動は日本人の心に刺激を与えた。(C)Getty Images

 どれだけ打たれて、点を失おうとも、マウンドから降りた投手を「よくやったな」と笑顔で迎え入れる――。東京ドームで開催されている第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次リーグプールBに参戦中のチェコ代表は、こと野球の国際大会においては、稀有な姿勢を見せる。

 去る3月11日に行なわれた日本代表戦もそうだった。彼らは終わってみれば、2対10と敗戦。投打で圧倒された「惨敗」とも言える結果だったが、「我々は世界一のチームと満員の会場でプレーできた。それとこの大会で試合ができたことが感激の感情以外にない」と語ったパベル・ハジム監督を筆頭にナインは笑顔でグラウンドに立ち続けた。

 決して野球のレベルや人気が高いわけではない。国内ではパベル・ネドベドやトマシュ・ロシツキーといった名手を輩出してきたサッカーが人気を博す。ヨーロッパという土壌を考えれば、それも当然なのかもしれない。

 チェコ・エクストラリーガという国内リーグは存在するものの、野球は「アマチュアスポーツ」の域を出ない。ゆえに選手たちも大半が別の職業を兼務する。日本戦に先発登板をし、大谷翔平をノーヒット、それも三振も奪ったオンドレイ・サトリアは電気技師としても生計を立てている。

 今大会は"本職"で有休が取れなかったために、来日ができなかった主力選手がいるとも聞く。そんな決して楽ではない状況で掴んだ国際舞台だからこそ、勝利を挙げもした快進撃は重要な意味を持つ。

 国内では地上波放送で日本戦が生中継されて、一大フィーバーを巻き起こした。その反響に、「本当にすさまじい影響がある」と言うハジム監督は、について論じる。
 
「チェコ全体が我々に大きな興味を持っている。野球人気は数段上がると思っている。東京ドームで日本のようなチームと対戦できたことは夢のような、おとぎ話のようなできごとなんだ。我々は全力を尽くして野球の素晴らしさをチェコ国内と世界に伝えたい」

 まだまだ発展途上の最中にあるチェコは運営面などで苦しい立場にある。それでも彼らは楽しんでプレーする。そんな野球の"原点"と言うべきチェコナインの姿勢は、日本代表のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が説いたWBCの意義と共通する。36歳のベテラン右腕は、大会直前に実施された宮崎合宿で、こう語っていた。

「やっぱり小さいときから楽しそうだから始めたことだと思うし、そこの原点を分かってほしいなと思います。とにかく楽しくやるのが野球だと思います」

 野球は楽しんでなんぼ。過酷な状況でもプレーを続け、「数年後に日本や韓国のレベルに追いつきたい」(ハジム監督談)とさらなる世界進出を狙ったチェコの選手たちのパフォーマンスは、その原点を思い出させてくれた。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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