砂漠の町、アリゾナ州フェニックス。まるで火星のような赤茶けた山々が点在する街の中心から北北西に約40分、車で走った郊外の、そのまた郊外に、サプライズという街がある。
ダイヤモンドバックスやNBA(バスケットボール)のサンズが本拠地を置く、アリゾナ州最大の都市フェニックスのように高層ビルは皆無で、場所によっては遠くの山の麓まで見えてしまう荒涼とした土地である。その片隅に、テキサス・レンジャーズとカンザスシティ・ロイヤルズのキャンプ施設はある。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の熱狂は、ここには届かない。残り1か月を切ったシーズン開幕に向けて、粛々と練習が始まり、終わっていく。
3月6日の朝も同じだった、その日にロードゲームが組まれていたレンジャーズの練習時間は極端に短く、9時半に室内の打撃練習、10時過ぎにはライブBPが始まり、それが終わると、マイナーの選手を除くほとんどの選手がクラブハウスに引き上げていった。
本来ならば、普通の打撃練習が始まる時間帯だが、クラブハウスの隣の練習フィールドに残ったのは筒香嘉智ただ一人だった。
ビザの発給が遅れ、マイナー解約のキャンプ招待選手として彼がチームに合流できたのは、2日前のこと。2週間近くの「出遅れ」を取り戻そうと、一人だけでも打撃練習をやりたいという希望を出していたそうで、バットを持ち、手袋をはめたまでは良かったが、「(打撃練習用の)ボールがないらしいです」と苦笑いする。
オープン戦で結果を残さなければ、開幕時のメジャーロースター入りはおろか、チーム残留も微妙な立場だ。平常心ではいられないはずだが、そこは日本プロ野球でキャリアを重ね、2020年のメジャー移籍後も怪我や不調で山あり谷ありの野球人生を送ってきた経験が生きている。
「マシン(打撃)で速い球を打ってきましたけど、実戦(形式の打撃練習)は去年の10月、マイナー(ブルージェイズ傘下3A)最後の試合以来なんで、やっぱり投手の球は違うな、という印象です。まあでも、思ったよりもしっかり(バットが)振れたかなと思う。あとは身体のキレとか、コンディションですね。もちろん、感覚がズレてる部分はありますし、合ってる部分もあるし、その辺はこれからですね。そっちの心配とよりは、ゲーム感とかそっちですね」
打撃練習で待ちぼうけを食らう前、彼は先発デーン・ダニングや、かつてブレーブスの守護神を務めたこともある救援左腕ウィル・スミスを相手に実戦形式の打撃練習を行った。安打性の打球は左中間に飛んだ一本だけだったが、自分のやるべきことがしっかり、見えているのだろう。いつもの彼らしく、落ち着き払い、少しも動じる素振りがなかった。
そう言えば、彼はいつもそんな感じでアメリカで野球をしている。タンパでも、ピッツバーグでも、3Aのインディアナポリスでも、バッファローでも、いつも泰然として、異国での時間を過ごしてきた。
もちろん、ここはアメリカだ。キャンプの練習中に「何もしてない時間」があったり、急に予定が変更になることも多々ある。そんな時は彼も「洒落になってないですよ」とか、「有り得ないでしょ」とか言うことはあるのだが、本当の意味では驚いておらず、目の前で起こったことをただ受け止め、「そんなこともあるでしょう」という感じである。
だから、たとえば実戦形式の打撃練習でベテラン左腕スミスと、キャンプ合流2日目でいきなり対戦しても、「左が好きなんで良かったです」と手応えを口にできる。タイミングを狂わされて前に出されることなく、しっかりと軸足に体重を残して力強いスイングをすることで、オフの間に取り組んでいた打ち方を徹底するのみ、だった。
「ベイスターズの時もそれ(軸足荷重)を意識してやってたんですけど、(重心が)アメリカ来て、投手方向に流れていたので、もう一回、後ろにしっかりという感覚です」
ダイヤモンドバックスやNBA(バスケットボール)のサンズが本拠地を置く、アリゾナ州最大の都市フェニックスのように高層ビルは皆無で、場所によっては遠くの山の麓まで見えてしまう荒涼とした土地である。その片隅に、テキサス・レンジャーズとカンザスシティ・ロイヤルズのキャンプ施設はある。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の熱狂は、ここには届かない。残り1か月を切ったシーズン開幕に向けて、粛々と練習が始まり、終わっていく。
3月6日の朝も同じだった、その日にロードゲームが組まれていたレンジャーズの練習時間は極端に短く、9時半に室内の打撃練習、10時過ぎにはライブBPが始まり、それが終わると、マイナーの選手を除くほとんどの選手がクラブハウスに引き上げていった。
本来ならば、普通の打撃練習が始まる時間帯だが、クラブハウスの隣の練習フィールドに残ったのは筒香嘉智ただ一人だった。
ビザの発給が遅れ、マイナー解約のキャンプ招待選手として彼がチームに合流できたのは、2日前のこと。2週間近くの「出遅れ」を取り戻そうと、一人だけでも打撃練習をやりたいという希望を出していたそうで、バットを持ち、手袋をはめたまでは良かったが、「(打撃練習用の)ボールがないらしいです」と苦笑いする。
オープン戦で結果を残さなければ、開幕時のメジャーロースター入りはおろか、チーム残留も微妙な立場だ。平常心ではいられないはずだが、そこは日本プロ野球でキャリアを重ね、2020年のメジャー移籍後も怪我や不調で山あり谷ありの野球人生を送ってきた経験が生きている。
「マシン(打撃)で速い球を打ってきましたけど、実戦(形式の打撃練習)は去年の10月、マイナー(ブルージェイズ傘下3A)最後の試合以来なんで、やっぱり投手の球は違うな、という印象です。まあでも、思ったよりもしっかり(バットが)振れたかなと思う。あとは身体のキレとか、コンディションですね。もちろん、感覚がズレてる部分はありますし、合ってる部分もあるし、その辺はこれからですね。そっちの心配とよりは、ゲーム感とかそっちですね」
打撃練習で待ちぼうけを食らう前、彼は先発デーン・ダニングや、かつてブレーブスの守護神を務めたこともある救援左腕ウィル・スミスを相手に実戦形式の打撃練習を行った。安打性の打球は左中間に飛んだ一本だけだったが、自分のやるべきことがしっかり、見えているのだろう。いつもの彼らしく、落ち着き払い、少しも動じる素振りがなかった。
そう言えば、彼はいつもそんな感じでアメリカで野球をしている。タンパでも、ピッツバーグでも、3Aのインディアナポリスでも、バッファローでも、いつも泰然として、異国での時間を過ごしてきた。
もちろん、ここはアメリカだ。キャンプの練習中に「何もしてない時間」があったり、急に予定が変更になることも多々ある。そんな時は彼も「洒落になってないですよ」とか、「有り得ないでしょ」とか言うことはあるのだが、本当の意味では驚いておらず、目の前で起こったことをただ受け止め、「そんなこともあるでしょう」という感じである。
だから、たとえば実戦形式の打撃練習でベテラン左腕スミスと、キャンプ合流2日目でいきなり対戦しても、「左が好きなんで良かったです」と手応えを口にできる。タイミングを狂わされて前に出されることなく、しっかりと軸足に体重を残して力強いスイングをすることで、オフの間に取り組んでいた打ち方を徹底するのみ、だった。
「ベイスターズの時もそれ(軸足荷重)を意識してやってたんですけど、(重心が)アメリカ来て、投手方向に流れていたので、もう一回、後ろにしっかりという感覚です」
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