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プロ野球

変化球のサインに首を振り、ストレートを投げたワケ。先発転向の西武・平良海馬を支える「データ分析」と「本能」<SLUGGER>

氏原英明

2023.04.17

契約更改の場で先発転向を直訴した平良。オフはWBCを辞退してまでも準備に専念した。写真:THE DIGEST写真部

契約更改の場で先発転向を直訴した平良。オフはWBCを辞退してまでも準備に専念した。写真:THE DIGEST写真部

 記者が意味を取り違えそうな反応をすると、西武の剛腕・平良海馬は言葉を選び直して念押しした。先発転向2戦目にして初勝利を挙げた、4月11日ロッテ戦後のことだ。

 2戦連続で浴びたホームランについて話が及び、この結果に対して平良なりの分析が語られた。意図がきちんと伝わっているのか確認するあたりに、自分の言葉を大切にする選手だなと改めて思った。

 この日の平良は初回、中村奨吾に2ラン本塁打を献上したものの、2回以降は立ち直った。終わってみれば、6回1安打2失点に抑えた。平良はピッチングスタイルから考え方まで先進的で、異端児とさえいえるが、同時に未来のスターになるという予感もある。

 たとえば、試合のイニング間の過ごし方だ。多くの投手は2アウトになるとベンチ前に出てきてキャッチボールで肩慣らしを行うが、平良はそうした「当たり前の行動」はしない。あえて逆を言っているわけではなく、そこには本人の信念があるのだ。
 
「投げる球の節約という意味もあるんですけど、その代わり、ベンチ裏では身体を動かしています。ふくらはぎや背中は固まりやすいので、ストレッチをしています。投げるための準備をしています」

 日本人投手は、昔からボールを投げるのが好きだ。暇さえあればキャッチボールに興じる。終盤までの激しい投げ合いになって球数がかさんできても、キャッチボールの習慣を変える選手はほとんどいない。しかし、平良は違う。一軍では今季が初めてのローテーション入りだというのに、自分の形にこだわるのだ。

 そもそも、平良が先発に転向したのも、自分の可能性を広げるためだ。

 2019年の一軍デビューから4年間は、セットアッパーやクローザーとして君臨してきた。20年にはセットアッパーとして新人王を獲得。2度のシーズン最多登板を記録し、昨季は最優秀中継ぎ投手のタイトルも獲得している。

 クローザーの増田達至がベテランと呼べる年齢にさしかかっているだけに、平良へのリリーバーとしての期待は大きかった。しかし昨オフに思い切って勝負に出た。契約更改の席で、あるいはメディアの前で「先発希望」を口にしたのだ。

 そこで、先発投手がいかに勝利に貢献できるかの持論を展開した。言葉の受け取り方によっては、中継ぎ投手は下に見るようにも聞こえなくもないが、それは本意ではない。リリーバーにはリリーバーの役割や果たすべきピッチングがあり、先発投手とは異なる。そこに固執すれば、自身の投球の幅が広がらないことを本人は感じていたのだ。
 
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