高校野球

佐々木麟太郎はドラフトの目玉になり得るか? 高校通算117本塁打に隠れた「不安要素」と「可能性」を見る

西尾典文

2023.04.23

高校球界では図抜けているパワーの持ち主である佐々木。彼が持つ可能性はいかほどなのか?写真:滝川敏之

 2023年は4月下旬になり、野球界は各カテゴリーでドラフト候補のアピールが続いている。一方で今年に入ってから動きが少ない選手も存在している。その"代表格"と言えるのが、佐々木麟太郎(花巻東)だろう。

 4月1日の時点で高校通算本塁打数が117本に到達したのは大々的に報じられた。だが、『きたぎんボールパーク』の開場記念試合となった早稲田実業戦は一発が出なかったせいか、ドラフト関連で、そこまで大きな話題となっていない。また、4月4日から3日間にわたって行なわれたU-18侍ジャパン候補強化合宿の招集も見送られており、選抜に出場した選手や代表候補となった選手に比べると、最終学年のスタートは静かな印象を受ける。

 この現状をふまえても気になるのは、佐々木が今年のドラフトで目玉となるかどうかという点だ。結論から先に述べると可能性は極めて高いと言える。
 
 何かと話題となる「高校通算本塁打数」は、練習試合の数や金属バットを使用してのものということもあって、あくまで参考記録。数字そのものが選手に対する評価に直結するわけではもちろんない。しかし、花巻東くらいのチームとなると、練習試合であっても対戦相手のレベルは高く、その中でこれだけのペースでホームランを量産できるというのはやはり並みの打者ではない。

 これまでに唯一出場した甲子園大会である昨春の選抜では、市和歌山の米田天翼(現・東海大)の140キロ台のストレートに差し込まれて4打数ノーヒット、2三振に終わったことで高いレベルの投手への対応を不安視する声も多いが、春先はどうしても打者より投手の方が有利。しかも佐々木は1年冬に胸郭出口症候群の手術を受けたために調整が遅れていた背景を考えると、この1試合だけで判断するのは早計だった。

 さらに佐々木は公式戦では徹底的にマークされることでなかなか結果を出すのは難しい状況でも、1年秋の東北大会と明治神宮大会、そして2年秋の岩手大会決勝と強豪と呼ばれるチームの投手からしっかりとホームランを放っている。この事実は彼の能力の高さの表れと言えるだろう。
 
NEXT
PAGE
不安要素を差し引いても魅力ある「可能性」