プロ野球

【密着女子アナが見た巨人】「ジャイアンツのみんなとビールかけがしたい!」若きエース戸郷翔征の自覚と自信<SLUGGER>

真鍋杏奈

2023.05.02

初の2ケタ勝利に最多奪三振のタイトル獲得、そしてWBC出場。戸郷は順調にエースへの道を歩んでいる。写真:産経新聞社

『奪回』――2023年の巨人軍のスローガンである。

 この言葉は、リーグ優勝や日本一の『奪回』だけを意味するわけでない。昨季、5年ぶりにBクラスに沈んだ悔しさを糧に、「このままで終わるものか」という個々の熱い想い、ジャイアンツの誇りと魂、選手の自信、ファンの信頼など、勝利のために必要なすべてのことを取り戻すという『奪回』があるのだと、原辰徳監督は語っている。

 開幕から1ヵ月が経ち、チームは5位と苦しんでいる状況だが、この『奪回』への想いを誰よりも強く感じている選手がいる。戸郷翔征投手だ。

 投手キャプテンとなった今季は、ここまで4試合で3勝1敗、防御率2.03。開幕から16イニング連続無失点を記録するなど、抜群の安定感を見せている。
「まだ自分は実績もないし、若手なので、投手キャプテンとして声をかけていくというよりは、チームをまとめるという意味で、結果を出して背中で引っ張っていきたい。菅野(智之)さんが背中で見せてくれていたように、僕も1年間数字を気にしながら、昨年を超える姿を見せたい。自分が成績を残せれば必然的にチームは強くなると思う」

 戸郷投手は、そんな風に自分なりのキャプテン像を描いている。

 昨シーズンは自己最多の12勝を挙げ、初タイトルとなる最多奪三振を獲得するなど、大きな飛躍を遂げた。
「僕の中では、2ケタ勝利が一つの壁だったので、乗り越えられてホッとしました。いろいろな方と会話をしてきて、特に桑田(真澄)コーチから『ピンチで粘ろう』と言われたことが(12勝できた)要因だと思っています。」

 粘られても粘り返すというマウンドでの強い気持ちが、2年連続9勝にとどまっていた自分の殻を破った。

 さらに今年は、WBCで侍ジャパンの一員として2試合に登板。計5イニングを2安打1失点に封じて14年ぶりの世界一奪還に貢献した。決勝のアメリカ戦では、念願だったマイク・トラウト選手(エンジェルス)との対戦も実現した。

「始まる前からトラウト選手と対戦したいと言っていて、それが最初に叶って、しかも三振が取れて本当にいい思い出になったし、そこでガッツポーズしちゃったくらい嬉しかったです! 本当にそういう機会をいただいて感謝しています」。興奮気味に語りながら、戸郷は野球少年のように目を輝かせる。

 大谷翔平選手(エンジェルス)やダルビッシュ有選手(パドレス)とたくさん会話をして、たくさん学んだことも収穫となった。

 試合では、ダルビッシュ直伝のスライダーが新たな武器となった。力の入れ方やボールの離し方などが自分の感覚とは違っていたと目を丸くした。他にも、トレーニング方法や食事・サプリの知識など自分に足りなかった部分を教わった。