専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

ドラフト全体1位指名の重圧に苦しんだミッキー・モニアック。弱点を克服して「第4の外野手」以上の存在になれるか<SLUGGER>

城ノ井道人

2023.05.30

フィリーズでは開花できなかったモニアックだが、エンジェルスで「ドラフト全体1位」の呪縛から解放されるかもしれない。(C)Getty Images

フィリーズでは開花できなかったモニアックだが、エンジェルスで「ドラフト全体1位」の呪縛から解放されるかもしれない。(C)Getty Images

 5月19日。ミッキー・モニアックは今季開幕後初めてエンジェル・スタジアムに立っていた。ツインズ戦で「1番・センター」として先発起用され、今季絶好調のジョー・ライアンから初回にレフト前ヒット。3回1死一塁の場面ではライト線に二塁打を放ち、テイラー・ウォードの先制犠飛につなげた。

 そして、1点を追う7回にはマイケル・テイラーのセンターへの大飛球をフェンス越しにもぎ取るホームランキャッチを見せ、その裏には同点三塁打を放って逆転を呼び込んだ。「信じられない気分だよ。最終的な目標は、メジャーに定着してチームの勝利に貢献することだと思っている。そして、この1週間はそれができたと思う。一歩一歩、一日一日に集中するだけさ」。モニアックは笑顔ではにかみながら語った。

 風貌にはどこか少年らしさが残るモニアックだが、数日前に25歳の誕生日を迎えており、「プロスペクト」と呼ぶにはギリギリの年齢だ。2016年ドラフト全体1位指名でプロ入りしてからもう7年近く。これまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。

 決定的な注目株がいなかった16年のドラフトで、フィリーズが全体1位で指名したのが、高校最終学年になって課題の長打力が伸びてきたモニアックだった。走攻守を備えたオールラウンド型の彼には、クリスチャン・イェリッチ(現ブルワーズ)と比較する声もあった。
 もう一つ、カギとなった要素がある。MLBのドラフトでは、球団ごとの総予算が設けられていることに加え、各指名枠の契約金にも推奨額が設定されている。そのため、例えば1巡目指名で契約金(ボーナスプール)を浮かせ、その分を3巡目指名の選手につぎ込むといった戦略が採用されることがある。16年のドラフトは本命不在だったことで、モニアックの指名にもそうした思惑が働いていた。

「我々はミッキーが今ドラフト最高の選手だと判断した」という当時のスカウト部長の言葉からは、選手の絶対的な能力ではなく、さまざまな要素から「相対的に」全体1位を選択したという経緯が感じ取れた。

 ドラフト年はルーキーリーグでOPS.749。翌春の『ベースボール。・アメリカ』誌の有望株ランキングでは球団内2位だった。ところが17年、1Aで初のフルシーズンを過ごしOPS.625に終わると、パワー不足に加えて打席アプローチや外野守備にも疑問の声が出始め「当初より我慢強く成長を待たなくてはならないようだ」との評価が付け加えられた。

 18年春のランキングでは球団内9位に後退。1A+でプレーしたその年は後半戦で調子を上げたもののOPS.687に終わり、将来像は「将来主軸を打つ中堅手」から「4人目の外野手」にまで落ちていた。

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号