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MLB

「アメリカのスポーツ史を変えた男」マービン・ミラーが殿堂入り。“鉄の信念”を持つ男の功績と半生を振り返る

出野哲也

2019.12.09

ついに殿堂入りを果たしたミラー。彼の功績はMLBのみならず、アメリカスポーツ史においても燦然と輝いている。(C)Getty Images

ついに殿堂入りを果たしたミラー。彼の功績はMLBのみならず、アメリカスポーツ史においても燦然と輝いている。(C)Getty Images

 12月8日(現地時間)、時代委員会による殿堂入り投票が発表され、MLB選手委員会初代理事を務めたマービン・ミラーと、カーディナルスなどで21年間プレーし通算2472安打を記録したテッド・シモンズの2人が、新たに殿堂入りの栄誉を与えられることになった。 

  日本ではそこまで有名ではないが、ミラーはMLBだけでなく、アメリカスポーツ史においても語り継がれる存在である。毎年、巨額FA契約が生まれるのも、すべてはミラーの「戦い」によるものだった。なぜ彼がそこまで偉大な男なのか、そしてなぜ彼は“嫌われた”のか。改めて解きほぐしていきたいと思う。

    ◆    ◆    ◆   
 今でこそかなり穏やかになったが、かつてのMLB選手会は「全米最強の労働組合」とまで形容され、ストライキも辞さぬ強硬な姿勢でオーナー側と戦い、数々の要求を勝ち取ってきた。その旗振り役となっていたのが、1966年に選手会事務局長に就任したマービン・ミラーである。ハンク・アーロンが「ミラーの球界における功績はジャッキー・ロビンソンに匹敵する」と言うように、ミラーがMLBにもたらした変革は極めて意義が大きく、殿堂入りしていない最重要人物と見なされていた。

 ミラーが選手たちに教えたのは、一言で表現すれば「喧嘩の方法」だった。

 彼が事務局長となるまで、選手会はほとんどオーナーたちの言いなりだった。19世紀に導入された保留条項によって、選手たちは自らの意思によって球団を移る権利を持っていなかった。ところが、その状態に疑義を挟む者は滅多に現れず、いたとしても即座にひねりつぶされていた。「好きな野球をして暮らせるんだから、君たちは幸せ者なんだ」とのオーナーたちの主張を信じ込まされていたのだ。

 多くのメジャーリーガーが田舎町の出身だったこともあり、組合や労働運動に嫌悪感を抱く者も少なかった。ミラーは仕事を引き受ける際「あなたは共産主義者ではないですよね?」と確かめられたと振り返っているが、当時の選手たちはその程度の認識しか持っていなかったのだ。
 
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