プロ野球

54年ぶり12連敗の異常事態。ソフトバンクを悩ます投打の“2大問題”と藤本博史監督に託された使命とは?

喜瀬雅則

2023.07.28

今季就任2年目の藤本監督。口ひげがトレードマークだ。写真:THE DIGEST

 7月7日の楽天戦を起点に、球宴も挟んで同24日まで続いたソフトバンクの12連敗は、前身の南海時代に15連敗を喫した1969年(昭和44年)以来、54年ぶりとなる異常事態だった。4カード連続の3タテを食らい、同8日からの11試合連続で3得点以下と、極端な打線の不振が目立った。

 ただ、7月24日の12連敗を喫した時点でも、貯金「3」で3位にいた。それだけ負けが込みながら、まだ勝ち数の方が負け数を上回り、Aクラスにいるというのもソフトバンクの"力"である。大型連敗突入前には貯金「15」を数え、2位のオリックスにも1.5ゲーム差をつけていたのだ。

 その「急降下」の要因は、どこにあるのか?

 守護神、ロベルト・オスナにつなぐ、8回のセットアッパー、リバン・モイネロが左肘を痛め、7月26日に手術、競技復帰まで3カ月と長期の戦線離脱を余儀なくされたのは痛手だが、もちろん大型連敗の引き金が、その1点だけに集約されるはずはない。開幕前から不安視されていた、投打における"2大問題"。これらが複雑に絡み合って、12連敗という下り坂の中で、そのほつれをほどき切れなかった感が強い、とでも言おうか。

 その2つを、紐解いていきたい。
 
 苦境に陥ったチームを踏みとどまらせる、負の流れを止め切るだけの「力」と「心」、さらに周囲からの「信頼感」。それらを兼ね備えた存在が"強いホークス"の長き歴史を振り返れば、必ず存在していた。

 2000年代に限定してみても、ソフトバンクの前身・ダイエーが最後の日本一に輝いた2003年なら、20勝を挙げた斉藤和巳(現・1軍投手コーチ)、2位に17.5ゲーム差をつけた2011年の日本一なら摂津正(現・野球評論家)がシーズン14勝を挙げ、4年連続日本一へのスタートとなった2017年には東浜巨が16勝を挙げ、最多勝に輝いている。

 そして昨季までなら、誰もが疑うことなく「エース」としてその名を挙げたのが千賀滉大だろう。昨季まで7年連続2桁勝利。その間の通算成績が83勝37敗。築き上げた"勝ち越し46"は、大黒柱の名にふさわしい勝ちっぷりだ。

 その実績を引っ提げて、ニューヨーク・メッツにFA移籍したのも、千賀滉大の野球人生という観点で考えれば、それこそ当然の流れでもある。ただ、裏を返せば、その存在感の大きさは、チームにとっては、大きな喪失感とイコールだ。

 2023年は「千賀の穴」が、ぽっかりと空いてしまった。
 
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「70点、80点の投手はいるんだよ」