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高校野球

プロ野球のような継投完封劇を可能にした、土浦日大・小菅監督の持つ“明確なビジョン”とマネジメント【氏原英明が見た甲子園:7日目】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.13

先発の小森(左)、伊藤と右の2投手で8回までつなぎ、最後は左のエース・藤本が締めた。小菅監督の見事なマネジメントで、土浦日大は初の3回戦進出を果たした。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

先発の小森(左)、伊藤と右の2投手で8回までつなぎ、最後は左のエース・藤本が締めた。小菅監督の見事なマネジメントで、土浦日大は初の3回戦進出を果たした。写真:梅月智史(THE DIGEST写真部)

 高校野球で、ついにこんな継投を見る時代がやってきたか。

 第3試合の土浦日大VS九州国際大付でのことだった。

 土浦日大が投手3人の完璧な継投で、九州の雄・九州国際大付を3対0で完封し、3回戦進出を決めたのだ。

 ただの継投で勝ったから、すごいのではない。先発→中継ぎ→抑えと、完璧な分業制をやってのけたのだ。これには、新しい時代の幕開けを見た気がする。

「こんなに綺麗に決まるとは思いませんでしたけど、3人でうまくつないでいければと思っていました」

 土浦日大の小菅勲監督が胸を張ったのも無理はない。

 この日の先発は、背番号「18」の小森勇凛。県大会では7イニングの登板しかないが、それは指揮官から見て本調子ではなかったからだ。もともとはエースの藤本士生との二枚看板を形成するつもりだったらしく、聖地に来てから状態が良くなっていることを確認。「甲子園で投げさせたかった」とこの日の先発を決断した。小森はその期待に応え、5回をたった1安打のみに抑えてバトンを繋いだのである。
 
 そして6~7回は、1回戦でも登板した背番号「10」の伊藤彩斗。小気味のいい投球が光る右投手だ。

「先発には憧れはあるんですけど、それは藤本と小森の役目。僕は与えられたところでしっかりと仕事を果たすだけ」と、2イニングをきっちり抑えて、3番手のエースにつないだのだった。

 小森も、伊藤も調子は良かった。もっと長く投げさせてもよかったのでは、と誰もが思うほどだった。しかし、ここは小菅監督のマネジメントが光った。

「僕はイニングの頭から交代させることが多い。ピッチャーにしてみればその方が親切だと思っていまして、イニング途中からマウンドに行くのはきついかなと。また、5回から6回にかけてのイニングまたぎは、これまでを見ていると(先発の)小森にはきついので、5回(まで)を投げてくれればと思っていました。予定通りの交代でした」

 高校生は試合数が圧倒的に少なく、ピンチで緊急登板した経験に乏しい。プロの中継ぎのように、窮地になって急遽交代を指示しても、思うような結果が出ることは少ないのが、投手起用の難しさの一つだ。

 小菅監督には、その点に対する配慮があった。

 ましてや今大会は、5回終了時にクーリングタイムによる10分間のインターバルがある。その間の調整は一筋縄ではいかないということもあり、小菅監督は先発の小森を5回完了時点で交代したのだ。
 
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