高校野球

【西尾典文が選ぶ甲子園ベストナイン】仙台育英と慶応からは計1名のみ。「プロでの活躍可能性」を基準に選出<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.25

左から花巻東・佐々木、神村学園・黒木、徳島商・森、智弁学園・松本。写真:THE DIGEST写真部

 多くの注目選手が出場した今年の夏の甲子園。中村奨成(2017年広陵・現広島)や吉田輝星(18年金足農・現日本ハム)のような甲子園の歴史に残る活躍を見せたスターは不在だったが、それでも将来が楽しみな選手は少なくなかった。

 そこで、今大会で輝きを見せた選手からベストナインを選出してみたいと思う。単純な活躍ではなく、「将来プロで活躍できる可能性が高いかどうか」というドラフト候補的な視点を選考基準とした。

【右投手】森煌誠(徳島商3年)
【左投手】黒木陽琉(神村学園3年)
【捕 手】尾形樹人(仙台育英3年)
【一塁手】佐々木麟太郎(花巻東3年)
【二塁手】月山隼平(浦和学院2年)
【三塁手】森田陽翔(履正社3年)
【遊撃手】横山聖哉(上田西3年)
【外野手】松本大輝(智弁学園3年)
【外野手】西稜太(履正社3年)
【外野手】正林輝大(神村学園2年)

 右投手は湯田統真、高橋煌稀(いずれも仙台育英3年)、小宅雅己(慶応2年)、高尾響(広陵2年)、玉木稜真(東海大熊本星翔3年)、東恩納蒼(沖縄尚学3年)なども印象に残ったが、1人を選ぶならやはり森になる。継投で戦うチームが大半の中で、徳島大会5試合、本大会2試合を一人で投げ抜いた。敗れた智弁学園戦こそ打ち込まれたものの、愛工大名電戦で見せた投球はスピード、コントロール、変化球すべてが高レベルで、大会ナンバーワンにふさわしい内容だった。
 
 一方の左投手は洗平比呂(八戸学院光星2年)、福田幸之介(履正社3年)を抑えて黒木を選出。背番号は10で、全5試合がリリーフでの起用だったものの、敗れた仙台育英戦以外はほぼ完璧な投球を見せ、イニングを上回る奪三振も記録した。スカウトのスピードガンで147キロをマークしたストレートは大きいカーブでより速く見せることができ、大型左腕の割にコントロールも悪くない。今大会に出場した投手の中では、ドラフト会議で最も早く名前が呼ばれる可能性も高い。

 ファーストはやはり佐々木の存在感が圧倒的だった。期待されたホームランこそ出なかったものの、宇部鴻城戦と智弁学園戦ではいずれも3安打を放ち、どの打球も速さは目を見張るものだった。まだ速いストレートには差し込まれることが多いものの、それだけボールを長く見ようという意識の表れであり、逆に低めの変化球はしっかり見極めることができている。これだけのスケールのある打者はそうそう出てくるものではなく、スラッガーとしての素質は疑いようがない。

 セカンドはドラフト候補と呼べるような選手は不在だったが、攻守ともに2年生とは思えないプレーを見せた月山を選んだ。打撃はタイミングをとる動きに無駄がなく、ゆったりとボールを呼び込んでセンター中心に弾き返すことができる。仙台育英の高橋から3本のヒットを放ったのは決してフロックではない。セカンドの守備も細かいステップでバウンドを合わせるのが上手く、スナップスローの上手さも見事だ。打てるセカンドとして秋以降も注目の存在である。
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好素材が多い遊撃でも上田西・横山は「最もプロ向き」