プロ野球

【タイトル争いを熱くする男たち:セ・リーグ】バウアーはフル回転で最多勝獲得も視野。竜の守護神は26年ぶりの偉業を狙う<SLUGGER>

藤原彬

2023.09.01

バウアー(左)は故障が軽症なら最多勝の可能性も。チームが低迷する中、マルティネス(右)は歴史的な快投を続けている。写真:THE DIGEST写真部

 9月に入り、シーズンもいよいよ山場。優勝争いもさることながら、タイトル争いの行方も気になるところだ。残り1ヵ月、各タイトル争いでカギを握る選手たちを紹介しよう。

■村上頌樹(阪神)
 昨季は一軍登板のなかった男が最優秀防御率のタイトル争いをリードすると誰が予想できただろうか。今季初登板となった4月12日の巨人戦で7回まで完全投球を披露すると、5月9日まで31イニング連続無失点投球を続け、現在までリーグ唯一の防御率1点台(1.89)を維持している。床田寛樹(広島)、東克樹(DeNA)とのハイレベルな争いはまだ決着しそうにないが、村上は2人より奪三振率(8.77)と被打率(.177)はかなり優秀で、リスクを抑えられる点が有利に働きそう。実績組に誤算が続いた先発投手陣で救世主となり、すでに新人王は当確ランプ。個人タイトルも獲得し、シンデレラストーリーに花を添えることができるだろうか。

■バウアー(DeNA)
 一軍合流は5月にもかかわらず、複数のタイトル獲得を狙える状況にある。中4日中心で積み上げた10勝と130奪三振はいずれもリーグ2位で、それぞれチームメイトの東克樹(11勝)と今永昇太(142個)に次ぐ。短い登板間隔の利を考えれば、どちらも射程圏内......と思われたが、8月30日の試合で右股関節に違和感を覚えて精密検査を受ける状況になった。大事ではなさそうだが、昨年はまったく登板しなかったブランクも含めて不安要素ではある。ポストシーズンの短期決戦でもキーマンになれる存在だけに、健康状態は自身のタイトルだけでなく、チームの命運までも左右することになりそうだ。

■東克樹(DeNA)
 2018年の新人王が故障による雌伏を経て、かつての輝きを取り戻している。ルーキーイヤー翌年からの3年間は左ヒジ故障の影響でまともに稼働できず、開幕投手を任された昨季はいきなり5連敗を喫するなど1勝6敗と散々だったが、今季はリーグ最多の11勝(2敗)を挙げて勝率.846でリーグ1位に立つ。リーグベストの与四球率0.94と制球力が冴えているだけに、大崩れせず勝利を呼び込む投球ができている。自身に続く10勝投手3人が勝率.714でも追いかけてくる展開で、タイトル争いは終盤までもつれそう。自身も含め、まずは最高勝率の対象となる13勝以上を目指したい。
 
■岡本和真(巨人)
 目下、34本塁打でリーグ2位に10本差をつけて、キング争いは独壇場と化している。8月6日の広島戦では自身初の1試合3ホーマーを放ち、早々に史上9人目の6年連続30本をクリアするなどインパクトも抜群だ。得点圏打率は.257と高くないものの、自己最多に並ぶ殊勲打29本を記録するなどWBCでも披露した勝負強さで打点王争いでもトップに立っていたが、新型コロナ特例で8月29日に戦線離脱。ほぼ同じタイミングで牧秀悟(DeNA)に抜かれてしまった。一刻も早く復帰し、2年ぶりの打撃二冠返り咲きに加えてチームのCS争いも後押ししたい。

■マルティネス(中日)
 歴史的な投球内容に、タイトル獲得で箔をつけられるか。開幕から8月13日まで36試合連続で自責点ゼロを記録し、現時点で防御率0.23やK/BB18.00など、過去にも見当たらない圧倒的な数字を残している。最下位に沈むチームで機会は限られているにもかかわらず、28セーブはリーグトップの田口麗斗(ヤクルト)と1個差。田口も大きく数字を伸ばせるようなチーム状況ではない。もし、最下位チームから最多セーブ獲得となれば、1997年に同じくドラゴンズの宣銅烈と河本育之(ロッテ)以来の偉業。明るいニュースが少ないドラゴンズの希望の光として、最後まで頑張ってもらいたい。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

 
NEXT
PAGE
【動画】これぞ魔球!マルティネスの必殺スプリットの落差を見よ