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プロ野球

“おかわり君”の異名の裏にある中村の技術力、栗山の追い込まれてからの驚異的な粘り――レオの40歳コンビが来季もチームに欠かせぬ理由<SLUGGER>

氏原英明

2023.09.28

01年ドラフトで、中村(左)が2位、栗山(右)が3位で指名されてからすでに22年。現在でも2人はレオの中核であり続けている。写真:THE DIGEST写真部

01年ドラフトで、中村(左)が2位、栗山(右)が3位で指名されてからすでに22年。現在でも2人はレオの中核であり続けている。写真:THE DIGEST写真部

 やはりこの2人の存在は欠かせない。

 主将・源田壮亮の開幕から1ヵ月出遅れたのに始まり、期待された助っ人ペイトンが4月末から約3か月も離脱。さらに山川穂高がプライベートの問題で出場できなくなったチームにあって、40歳の2人のバットは色褪せることはなかった。

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 たとえば、9月17日。ベルーナドーム初見参となったロッテ佐々木朗希の出鼻をくじく二塁打を放ったのはこの日、4番に入った栗山巧だった。1回2死一塁から二塁打を放ち、決勝打にもなった3得点のお膳立てを果たした。同19日の日本ハム戦では1点ビハインドの6回裏に、中村剛也が17号本塁打を放って反撃の口火を切った。

 互いに指名打者を分け合い、同時出場することはなかなかない。だが、それぞれが役割をまっとうし、気づけば主役になっていた。

 安打製造機とホームランアーチスト。

 真逆の特徴を持った2人だが、決して才能だけでここまで来たわけではない。

 ここまで磨き上げたスキルが、40歳になってもう一つ上のステージへ上がったような印象だ。

「年齢を重ねてきて、若い頃はできたことができなくなっていく。その中で、勝負のかけどころを分かっている」
 
 そう語るのは平石洋介ヘッドコーチだ。かつて選手や監督として対戦していた時も、2人のことを脅威に感じていた。だが、「おかわりも栗も、対戦相手として見ていた時よりも一段とレベルの高い打者になっている」と、さらなる驚きを隠さない。

 長打力が売りの中村剛也だが、練習では常に技術力を意識しているのが見てとれる。

 たとえば試合前の練習では、左側のゲージに入る時、守備につく選手たちの方をあえて狙って打っている。

 守備側が生きた球を受けたいことを知っているためだ。一見遊んでいるかのように打ち返しているが、これは技術力の確認でもある。

「このポイントで打てばショートに行くし、もうちょっと前で打てばサードに行くという、その確認ですね。狙って打つのであれば、このポイントにしないと(打球が)そこにいかないということです。小手先でやるのではなくて、ポイントで飛ばすようにしています」

 思い返すのは、7月15日の日本ハム戦での一打だ。

 0対0の展開から9回裏1死二塁の場面で打席に立った中村は、日本ハムのセットアッパー・池田隆英の速いストレートとカットボールに手を焼いていた。打席に入った当初は大きめの打球を狙っていたが、3球で追い込まれた。だが、その直後。「何とか食らいついていこう。エンドランを打つくらいの意識」という打球は、狙いすましたかのように前進守備のセンターの頭を超えた。

 来たボールに対して、どのようにバットを出せばヒットになるのか。相手の守備の網をあざ笑うかのように、絶妙な方向に飛ばした一打は熟練の芸当だった。

「たまたまっすよ。いいところに飛びました。試合前の練習の効果かって? そう思って練習はしていますけど……でも、偶然かな」

 中村らしい語り口だ。“おかわり”と言うニックネームでは、彼の本当のバットマンとしての力量を見誤らせてしまうかもしれない。
 
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