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プロ野球

若手野手の台頭が待たれる西武にひと筋の光明。佐藤龍世のひたむきな鍛錬の先にあった“覚醒”<SLUGGER>

氏原英明

2023.09.29

ホーム最終戦での殊勲打によりお立ち台に上がった佐藤。西武の新たなるスターの第1章となるか。写真:産経新聞社

ホーム最終戦での殊勲打によりお立ち台に上がった佐藤。西武の新たなるスターの第1章となるか。写真:産経新聞社

 本当にひと皮むけた。

 本拠地ベルーナドームでの最終戦のことだった。1対1の同点で迎えた8回裏、7球粘った末に佐藤龍世が放った打球が左翼手の頭を超えていくのを目にした時、新たなライオンズの顔を見たような気がした。

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 三塁ベース上でガッツポーズする佐藤の姿に、新たな息吹を感じずにいられなかった。

 今季の西武にとって、野手陣における若手の台頭は大きな課題だった。

 投手陣はエースの高橋光成をはじめ、今井達也、平良海馬と新しい世代の役者は揃っていた。しかし、野手は2018、19年の連覇を支えたメンバー以降、新たな世代の台頭がなかったのだ。

 外野陣ではルーキーの蛭間拓哉をはじめ、岸潤一郎、長谷川信哉らが入れ替わり立ち替わり出場機会をもらった。いずれもある程度のパフォーマンスを見せつけることはできたが、一本立ちというところまではいかなかった。
 
 一方、三塁手は外国人のマキノンが務めるはずだったが、一塁レギュラーの山川穂高がプライベートの問題により、長期の戦線離脱。それによってマキノンが一塁に回り、空位となった三塁を巡って多くの若手が試されてきたのだった。

 佐藤の他に、長打力が売りの渡部健人、意外性のある平沼翔太、中距離打者の呉念庭らだ。

 中村剛也の怪我などもあって、最初にポジションをつかみかけたのは渡部だった。しかし、彼もまた故障の憂き目に合うと、平沼らたくさんの選手が試されるようになった。その中で8~9月に一歩抜け出してきたのが佐藤だった。

「開幕前から、今年にかける想いが伝わってくる選手の1人。ああ見えて真面目で、野球をよく理解している。その姿勢がここへきて形になってきたのかなと思う」

 そう目を細めるのは平石洋介ヘッドコーチだ。

 もともと佐藤の今シーズンは、第三捕手もできるユーティリティプレイヤーとしてスタートした。

 前半戦は「その役割でベンチに入れている」と謙虚に語っていたが、その頃からずっと佐藤を支えてきたのは、その練習量だ。

 若手には早出の指名が義務付けられる時があるが、佐藤は練習後にも室内練習場で鍛錬を続けてきた。
 
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