リーグ３連覇を成し遂げたオリックスだが、今年も強力なブルペン陣の踏ん張りが目立ったシーズンだった。怪我や体調不良で救援陣が安定感を欠いていた時期、中嶋聡監督は先発で結果が出ていなかった山岡泰輔を中継ぎに配置転換する大胆な決断を下した。

「山岡の場合は、皆さんも思ってると思うんですけど、やっぱり４回、５回でもたつくというのは何かあるなと。なかなか点を取ってやれなかったというのもありますけど、１回（イニング）だったら多分、行けるのは判断的にあった。先を考えずに飛ばしていけるのは、いい止まり方（終着点）かなと思いました」

　山岡は毎年、いくつかの目標を立てており、小目標の「怪我をしないこと」、大目標の「優勝すること」は昨年どちらも達成した。中目標はいくつかあるようだが、その一つはここ数年減少傾向だった登板機会についてだったと思われる。中継ぎに転向したことについて尋ねるとこう言った。

「すごい楽しくできてます。はい。いいところで投げさせてもらったりしてるんで」

　「楽しい」という言葉が出たのが印象的だった。なぜなら、山岡は入団した時から「野球をしていて楽しいと思ったことはない」と話していたからだ。 　先発の時はルーティーンを決め、ストレスのない生活を過ごすことを重視していた山岡。「ストレスのない生活」に関してはリリーフ転向後も「まったく変わりはない」と言う。逆に調整には苦労した部分もあったというが、第２先発的な役割も兼ねていることについては「チームがどう使うかとかは（自分では）分からないんで、とりあえず、勝ってるところっていうところしか聞いてないから、『投げろ』って言われたところでゼロに抑えれたらいいかなと思ってます」と、どんな場面でも対応できるように準備をしている。

　エースとして開幕投手を務めた経験もあり、チームの顔の一人でもあるだけに、ホームでもビジターでも名前がコールされると「ここで山岡？」とスタンドがざわつくと同時に、「山岡が観られるのか」というちょっとしたお得感にも似た雰囲気に包まれる。

　本人は「まだ珍しいからじゃないですか。まだ慣れてないというか」とした上で「やっぱ、今まで経験したことないポジションなんですけど、 そこに楽しさだったりとか、新鮮さだったりがあります」と、自身でも新たな役割で投げる喜びを感じているようだ。

　ポストシーズンでは「任せられたところで投げていくだけかな」とシーズン中と変わらないスタンスで腕を振る意向。相手チームにとっては厄介な存在になってくれそうだ。脅威のリリーバー山岡泰輔に期待したい。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ／1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第９回 特集オリックス・バファローズ』（カンゼン）ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。
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