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高校野球

バチバチではなくリスペクトし合う関係性――豊作世代の甲子園監督たちが“同志”から受ける刺激

氏原英明

2024.03.30

2021年から創志学園を率いる門馬監督。東海大相模時代には春夏合わせて4度の全国制覇を達成した。写真:滝川敏之

2021年から創志学園を率いる門馬監督。東海大相模時代には春夏合わせて4度の全国制覇を達成した。写真:滝川敏之

 敗軍の将にしてはやけに晴れやかだった。

「さりげなくプレーしているんですよ。ガツガツやるというよりも、非常にさりげなく淡々と実行する。決め球を打つボールにしてもファウルにすることなく仕留めていく。監督の意図するところが選手に伝わっていたのかなというふうに思いますね」
 
 2回戦で山梨学院に敗れた創志学園の門馬敬治監督が試合後のインタビューで淡々と話していたのが印象的だった。負けた悔しさは当然あるのだろうけれども、それ以上に勝手知ったる指揮官が作ってきたチームにリスペクトを抱いている。

 その表情には「さすがだな」「やられたよ」というのが滲み出ていているような語り口で、門馬監督はその敗戦に大きな価値を感じているようでもあったのだ。

「本気で勝利したいと思ってどの相手にもやるわけですよね。甲子園で過ごした時間というのは誰にも与えられたわけではなくて、だからこそ、そういう時間を力にしてほしい。吉田監督の野球から感じたことはたくさんありました。それは選手も同じだと思います。でも、それこそ負けて感じていては遅いわけでね。やっぱり勝った中でね、感じられるように。チームを強くしたいなというふうに思います」

 最近ではよく知られるようになったが、甲子園監督の豊作世代というのがある。門馬監督とこの日の対戦相手だった吉田洸二監督はともに1969年生まれの同世代だ。このほかに、2度の春夏連覇を果たした大阪桐蔭の西谷浩一監督や京都外大西の上羽監督、常総学院の島田直也監督なども同じ世代にあたる。

 やはり、指揮官同士、意識するところもあるというが、この世代の監督たちを取材すると独特な空気感がある。ライバルというバチバチしたような関係ではなく互いをリスペクトするような関係性だ。

 西谷監督は話す。

「今大会は同世代監督が多いですよね。意識をするというか、仲間、同志ですね。お互い、それぞれの都道府県を勝ち抜けて良かったという気持ちはあります。僕らは昔から仲良かったというわけではなかったんですけど、島田監督は甲子園のスター選手でしたし、上羽監督は甲子園で選手宣誓をしたほどの選手でした。僕は甲子園も出れなかったので、その悔しさを持ちながら監督をしてきましたけど、門馬監督が2000年に初めて優勝した時に、同級生なんだーというのを思ったのを覚えていますよね。お互い刺激をいただきならやっています」
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