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【玉木正之のベースボール今昔物語:第11回】アメリカへ行くならメジャーだけでなくマイナーも! 30年近く前に体感した「人生で一番楽しい場所」<SLUGGER>

玉木正之

2025.05.22

セインツの旧本拠地ミッドウェイ・スタジアム。独立リーグ時代のセインツはユニークなプロモーションを数多く敢行して注目を集めていた。ツインズ傘下となった現在は、同じくセントポール市にあるCHSフィールドにホームを移している。(C)Getty Images

 今季も大谷翔平(ドジャース)は、期待通りの大活躍だ! おまけに同じくドジャースの山本由伸のエース級の快投や、佐々木朗希の頑張りもあり、円安にもかかわらず現地で本場メジャーのベースボールを見てみたいと計画している人もいることだろう。

 ロスだけでなくサンディエゴにも足を伸ばし、ダルビッシュ有や松井裕樹(ともにパドレス)の姿もナマで……いやいや、カブスの鈴木誠也や今永昇太、オリオールズの菅野智之の円熟な投球ぶりも……日本人選手のメジャーでの活躍は嬉しいけど、人数が増えると少々困ったもんだ……と思っているファンもいるかもしれない。

 そんな折に、さらに困らせようとするわけではないが、どうせアメリカへ行くのなら、メジャーだけでなくマイナーリーグのボールパークにぜひとも足を運んでほしいと思う。

 というのは、確かにメジャーの迫力あふれるプレーも見応えがあるが、「これまでに足を運んだ中で最も楽しかったところは?」と訊かれたら、私は躊躇することなくマイナーの球場を挙げるからだ。

 まず第一に楽しかったボールパークは、ミネソタ州の州都セントポールに本拠を置く、セントポール・セインツの本拠地球場だ。
 
 セインツは、現在はツインズの傘下3Aだが、私が訪れた1997年当時は北米独立リーグ、ノーザンリーグに所属する球団で、年間40試合ほど行うホームでの試合は、1万5000人程度収容の本拠地ミッドウェイ・スタジアムが常に満員だった。

 という以上に、午後7時プレイボールのナイターの時には、4時くらいから駐車場のあちこちでBBQパーティーが始まり、その一角にあるステージではカントリーやジャズの決して上手いとは言えない素人の音楽や歌声が響いていた。もちろん、ビールを片手にステーキを頬張っている大勢の聴衆は、ヤンヤの喝采を贈っていた。

 球場の客席も、三塁側はベンチの後方まででしかスタンドがなく、そこからレフトポールの外野席はBBQパーティー席。駐車場の連中がそのまま移動し、飲み食いしながらベースボールを楽しんでいた。

 さらに外野席の最前列は「バブルバス・シート」と呼ばれ、ジャグジー付きで10人くらいが入れるバスタブが5つくらい並ぶ。そこで水着に着替えたファンがジャグジーバスに浸かりながら観戦していた。バックネット裏の観客は、双眼鏡でその様子を眺めて、「右から3番目のバスタブにいるビキニ姿が今日のベストだ」などと話し合っていたものだ。
 
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