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MLB

【プエルトリコ野球“復権”の理由:前編】名捕手を輩出する「豊かな土壌」

中島大輔

2020.07.29

現在ロッテの4番を務める安田は昨オフ、プエルトリコの冬季リーグに参加していた。(写真)龍フェルケル

現在ロッテの4番を務める安田は昨オフ、プエルトリコの冬季リーグに参加していた。(写真)龍フェルケル

「僕は内野手なので、守備のハンドリングとスウィングのパワーの強さをすごくイメージしてきました。実際に来て、内野の守備の上手さを実感しています。練習でも日本とは違うハンドリングやスローイングを見て、すごくいい勉強になっていますね」

 そう話したのは、千葉ロッテからクリオージョス・デ・カグアスに派遣された安田尚憲だ。17年ドラフト1位でロッテに入団した左打者の三塁手は高卒3年目の飛躍を見据え、遠い異国へ武者修行に出かけた。

 安田が語っていたように、プエルトリコには数々の名内野手を輩出する土壌がある。「史上最高の二塁手」とも評され、殿堂入りも果たしているロベルト・アロマー(元ブルージェイズ)をはじめ、近年ではフランシスコ・リンドーア(インディアンス)やハビア・バイエズ(カブス)、カルロス・コレア(アストロズ)らMLBを代表するショートストップが活躍している。

「守備の基本的なところは日本と一緒なんです。『足のステップで運ぶのが内野守備の基本だ』とプエルトリコのコーチに言われました。『最後に捕るところまでボールを見る』とか、少年野球の時と同じようなことをこっちでも言われていますね」

 安田が言う通り、守備の基本は万国共通だ。ただし、日本とプエルトリコではそれを身に着けるアプローチが異なっている。

 ナイトゲームのプレーボールまでまだ4時間近くある昼下がり、多くの選手たちがクラブハウスでくつろいでいる頃、ほとんど人のいないグラウンドに安田の姿があった。人工芝に両ヒザを着き、数メートルの距離から身体の正面に転がされたボールを素手で捕っていく。次はグローブをはめ、正面、逆シングル、前方のゴロとさまざまなグラブさばきで捕球する。守備位置に就き、ノックを受けるのはその後だ。
 
 プエルトリコではこうした基本練習を大事にしながらソフトハンドに磨きをかける。一方、守備の考え方も日本とは異なっている。再び安田の弁だ。

「こっちの考え方としては、捕ってからどれだけ早く投げられるか、どれだけアウトを多く取るかが大事です。コーチには常に『前に行け』と言われていますし、『チャレンジすることが大切だ』と言われますね」

 日本では確実にアウトにすることを求められるのに対し、プエルトリコの選手たちは積極的にトライする。エラーをしても何食わぬ顔でやり過ごし、次の守備機会や打席で取り返せばいい。そうした切り替えのうまさはラティーノたちの持ち味だ。

「こっちのキャッチャーって、特徴的に内野手っぽいんですよ」

 勉強中のスペイン語を駆使しながらラテン流を学でんいるという安田が、筆者の旅のテーマにヒントをくれた。

「あそこにいるのがうちのレギュラーキャッチャーですけど、内野守備もすごくうまいんです。グラブさばきが柔らかいし、スローイングもどんな形でもできる。捕ってから投げるまでが早いですしね」

 安田がそう評したのは、カグアスの正捕手を務めるジョナサン・モラレスだ。ブレーブス傘下に所属する25歳のマイナーリーガーで、19年は2Aで46試合、3Aで34試合に出場するなど、今季のメジャーデビューを狙っている。
 

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