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MLB

【プエルトリコ野球“復権”の理由:前編】名捕手を輩出する「豊かな土壌」

中島大輔

2020.07.29

■名捕手を生み出す方法論「7つの基本」を磨きをかける

 右腕投手のヒラム・ビソーンが42年、プエルトリコ初のメジャーリーガーとなって以降、この島から200人を超える選手がMLBでプレーしてきた。中でも強いインパクトを残したのが数々の名捕手たちだ。世界で最も多く優秀なキャッチャーを輩出しているのは、おそらくプエルトリコだろう。その背景には何があるのか。モラレスに聞くと、こう答えた。

「プエルトリコではキャッチャーの育成法がすでにでき上がっているんだ。イバン・ロドリゲスやベニート・サンティアゴがこの島の出身だ。彼らが進んだ道を俺は追いかけている」

 オールスターの常連だった両名をはじめ、プエルトリコが生んだ名捕手を挙げれば枚挙に暇がない。サンディ・アロマーJr.(元インディアンス)やホーヘイ・ポサーダ(元ヤンキース)、現役ではヤディアー・モリーナ(カーディナルス)らがいる。モリーナの2人の兄も、メジャーリーグで捕手として活躍したことはよく知られている。
 
 ダイヤモンドで一人だけ他の選手と異なる方向を向いて守る捕手は、特殊な役割だ。「扇の要」と言われる司令塔を育て上げるため、プエルトリコにはどんな方法が確立されているのだろうか。

 その答えを示してくれたのは、島内きっての育成機関だ。サンフアンから車を南に30分走らせたグラボという町に、プエルトリコ・ベースボール・アカデミー&ハイスクールはある。02年に設立された同校はMLBに資金援助を受けながら選手たちを育成し、コレアやクリスチャン・バスケス(レッドソックス)など多くのメジャーリーガーを送り出してきた。

「キャッチャーには基本が7つある」

 褐色の肌に白い髭を蓄えた63 歳の捕手コーチ、アダルベルト・フローレスは職人的な雰囲気を醸し出しながら言った。捕手や投手としてプロ経験を積み、同校で教えて16年になる。フローレスが定義する「捕手の7つの基本」とは、「スタンス(姿勢)」、「ターゲット(構え)」、「レシービング(捕球)」、「フットワーク」、「スローイング」、「フォロースルー」、「ブロッキング」だ。
 

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