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MLB

【プエルトリコ野球“復権”の理由:前編】名捕手を輩出する「豊かな土壌」

中島大輔

2020.07.29

 練習は月曜から金曜まで毎日約3時間、ポジション別に行われる。捕手は毎日異なるメニューをこなしながら、7つの要素に磨きをかけていく。「それぞれの要素がなぜ大事で、どんな意識を持つべきか。精神的な要素を含めて伝えていく」と、もう一人の捕手コーチのケニー・マレーロが話した。

 雨季独特のスコールに見舞われた取材日、アカデミーから車で10分ほど離れた市民球場の室内通路で、15人の捕手が二班に分かれ、異なるメニューに取り組んでいた。5メートルの距離からラケットで放たれるテニスボールをミットで捕球するグループがある一方、もう一つはプラスチックの小さな球体に穴のたくさん開いたゴルフの練習球を素手でつかんでいく。ともに野球の硬式球より捕球するのが難しく、レシービング能力を高められるという。

 こうした捕り方一つにも決まり事がある。フローレスが解説する。
 
「人差し指を時計の1時の方向に向け、親指と人差し指で『L』の形をつくる。それで中指を加えて3本の指で捕るんだ。親指と人差し指の間でポケットのように捕るイメージだね。3本の指で捕るのは、その方が5本よりも動かしやすいからだ。ボールを迎えにいかず、構えたところで捕る。ヒジより前の腕をダイアゴナルに、車のワイパーのように動かすイメージだ。そうすればソフトハンドで捕球できる」

 日々きめ細かい技術指導がなされ、能力を高めるためのメニューのバリエーションも豊か。そうした環境の中で選手たちは前向きに成長していく。 プエルトリコ・ベースボール・アカデミー&ハイスクールと同様の練習方法は、島内の育成機関として双璧に挙げられるカルロス・ベルトラン・アカデミーでも行われていた。

 プエルトリコでは両校のようなアカデミーが15年ほど前から増えてきたという。89年からプエルトリコ出身選手がMLBのドラフトに組み込まれたことがきっかけとなり、育成の土壌が豊かになった。そうして先を見据えた指導が行われ始め、スケールの大きな選手が生まれているのだ。
(後編に続く)

文●中島大輔
※『SLUGGER』2020年5月号より転載

【著者プロフィール】 
なかじま・だいすけ/1979年生まれ。2005年から4年間、サッカーの中村俊輔を英国で密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』。『中南米野球はなぜ強いか』で2017年度ミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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