では、見えづらい成長がありながらも、結果を残せなかったのはなぜか。それは「外角」という穴が残ったままだからだろう。
アウトコースの打率は1年目が.224、2年目は.195、そして今季も1割台中盤と低迷。高校時代から「内角に弱い」と言われていたせいか(実際打てていない)、プロ入り後の清宮はややホームベースから離れて打席に立つことで内角攻めを物理的に減らしている。しかし、これにより外角が遠くなってしまい、そこに投げられるとバットが空を切るか、当たってもうまくパワーを伝えられず、力のない打球になっている。
BABIPという指標がある。Batting Average on Balls In Playの略で、そのまま訳せばインプレ―(本塁打とファウルを除く)になった打球がヒットになった割合となる。おおむねリーグ平均は3割前後になり、多くの打席を立つと平均値に収まることから、ある年にBABIPが高い選手はどこかで下がる傾向にある(逆もまた同様)。BABIPが高いシーズンの後は数字が悪化し、成績も下降することが少なくないため、「運」の要素が強いという観点から翌年の成績予測に使える指標の一つだ。
さて、清宮のBABIPは1年目から.266→.256→.224。3年連続でリーグ平均を大きく下回り、これだけを見ると「清宮はずっと運がない」という解釈ができなくもない。しかし、この運を覆すような要素はいくつかあり、例えば力強い打球で守備の間を抜く、イチローのような天才的技術で守備の穴をつく、快足を飛ばして内野安打を稼ぐことで高BABIPを維持できる。逆に言えば、これらの要素がないと、BABIPはなかなか上がりづらい。
まさしく清宮が「できていない」方で該当する。彼自身は決して足が速くないし、打球傾向も引っ張りの意識が強いためシフトが敷きやすい。さらに、先に挙げたアウトコースに投げられると強い打球が打てず、簡単に守備側に処理されてしまう。
本人は比較されたくはないだろうが、村上はアストコースの対応が抜群に成長した。3年目はスウィング時の顔のぶれが一気になくなり、足を高く上げてもその姿勢をキープしながら、外角に対しても強く踏み込みつつ、逆らわずにバットを振り出すことで広角にヒットを量産できていた。その村上も、昨年はアストコースに打率.204と苦戦していたが、今季はそのコースで10本塁打、打率も2割後半と克服している。
今や球界屈指の打者に成長した村上の打撃は、まさに生きた教材だ。“清宮世代”のライバルとしてだけでなく、学ぶべきところが多いはずである。今から急激に足が速くなることは難しいとしても、アメリカでは最新テクロノジーやスウィング改良によって打球内容を改善した選手が多数いる。清宮もまだまだ成長の余地は十分あるはずだ。
何より、“清宮世代”と言われたのは、強い打球で本塁打を打ちまくっていたからではなかったか。アプローチでは確かな成長を感じさせた今シーズン。来季はそれを維持しながら、打球の強さ、そして目に見える結果を出してほしい。やるべきことは明確なはずである。
文●新井裕貴(THE DIGEST編集部)
アウトコースの打率は1年目が.224、2年目は.195、そして今季も1割台中盤と低迷。高校時代から「内角に弱い」と言われていたせいか(実際打てていない)、プロ入り後の清宮はややホームベースから離れて打席に立つことで内角攻めを物理的に減らしている。しかし、これにより外角が遠くなってしまい、そこに投げられるとバットが空を切るか、当たってもうまくパワーを伝えられず、力のない打球になっている。
BABIPという指標がある。Batting Average on Balls In Playの略で、そのまま訳せばインプレ―(本塁打とファウルを除く)になった打球がヒットになった割合となる。おおむねリーグ平均は3割前後になり、多くの打席を立つと平均値に収まることから、ある年にBABIPが高い選手はどこかで下がる傾向にある(逆もまた同様)。BABIPが高いシーズンの後は数字が悪化し、成績も下降することが少なくないため、「運」の要素が強いという観点から翌年の成績予測に使える指標の一つだ。
さて、清宮のBABIPは1年目から.266→.256→.224。3年連続でリーグ平均を大きく下回り、これだけを見ると「清宮はずっと運がない」という解釈ができなくもない。しかし、この運を覆すような要素はいくつかあり、例えば力強い打球で守備の間を抜く、イチローのような天才的技術で守備の穴をつく、快足を飛ばして内野安打を稼ぐことで高BABIPを維持できる。逆に言えば、これらの要素がないと、BABIPはなかなか上がりづらい。
まさしく清宮が「できていない」方で該当する。彼自身は決して足が速くないし、打球傾向も引っ張りの意識が強いためシフトが敷きやすい。さらに、先に挙げたアウトコースに投げられると強い打球が打てず、簡単に守備側に処理されてしまう。
本人は比較されたくはないだろうが、村上はアストコースの対応が抜群に成長した。3年目はスウィング時の顔のぶれが一気になくなり、足を高く上げてもその姿勢をキープしながら、外角に対しても強く踏み込みつつ、逆らわずにバットを振り出すことで広角にヒットを量産できていた。その村上も、昨年はアストコースに打率.204と苦戦していたが、今季はそのコースで10本塁打、打率も2割後半と克服している。
今や球界屈指の打者に成長した村上の打撃は、まさに生きた教材だ。“清宮世代”のライバルとしてだけでなく、学ぶべきところが多いはずである。今から急激に足が速くなることは難しいとしても、アメリカでは最新テクロノジーやスウィング改良によって打球内容を改善した選手が多数いる。清宮もまだまだ成長の余地は十分あるはずだ。
何より、“清宮世代”と言われたのは、強い打球で本塁打を打ちまくっていたからではなかったか。アプローチでは確かな成長を感じさせた今シーズン。来季はそれを維持しながら、打球の強さ、そして目に見える結果を出してほしい。やるべきことは明確なはずである。
文●新井裕貴(THE DIGEST編集部)