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通算勝利数MLB歴代2位に浮上した“時代遅れの名将”ラルーサが称賛した「日本人選手」<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2021.06.07

 15年、当時アリゾナ・ダイヤモンドバックスのCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)を務めていたラルーサにインタビューしたことがある。ある本の中で、彼が「自分が監督した中で、才能に恵まれ、なおかつ飽くなき向上心を持っている選手を挙げてみたら17人しかいなかった」と語ってたことについて尋ねると、理想の選手としてある日本人選手の名前を口にした。

「私が求めていたのは、ただひたすら野球がうまくなりたいと考える選手だ。スターでなくても正しくプレーし、精神的にもタフで、チームメイトを助け、どんな状況も恐れない選手だ。私は胸を張って言うが、田口壮という日本人選手はまさにそういうプレーヤーだった。スーパースターではなかったけれど、とても重要な存在だった。チームが勝つためだったらどんなことでもしてくれた。今、日本にいるから言っているんじゃない。アメリカでも何度も同じことを話してきた」

 質問への答えを聞いた上で田口の話題に移ろうと思っていたのに、ラルーサが自分から田口の名前を口にしたことに驚いたのをよく覚えている。
 確かに、田口はいかにもラルーサ好みの選手だった。外野の3ポジションで堅実な守備を披露し、打席ではバントやエンドランなど小技で貢献。走塁センスにも優れ、日本が誇る“スモールベースボール”を体現できる選手だった。

 もちろん、田口もラルーサを敬愛していて、あるインタビューでは「あれほどきっちりと戦略を持って試合に臨んでいる人はいないと思います。気まぐれの采配は一切ない」と語っている。

「ホームランと三振ばかりで大味だ」との声が聞かれる昨今のMLB。そうであるならば、“古き良き時代”を体現するラルーサの存在意義はまだ失われていないのではないか。いくらか頑迷だったとしても、彼が優れた“野球人”であることは疑いようがないからだ。

 ホワイトソックスの若手スター遊撃手ティム・アンダーソンは、ラルーサとの関係をこう表現している。

「トニーは父親で、俺たちは言うことを聞かない悪ガキみたいなもんさ。それでもうまくやっていけるもんだよ」。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)
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