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侍ジャパン

侍ジャパンの“投手MVP”は栗林良吏。社会人野球で培った経験が大舞台で発揮された【東京五輪】

西尾典文

2021.08.09

 栗林の所属していたトヨタ自動車は昨年の都市対抗でも優勝候補の一角に挙げられていたが、初戦のセガサミー戦で先発した栗林は7回13奪三振という好投を見せながらも2回にツーランを浴びて負け投手となっている。

 ドラフト指名の後に行われた大会で、2年間所属したチームに恩返しできなかった悔しさは相当なものがあったはずだ。プロではその経験を生かし、前半戦でもオリンピックの大舞台でも1本もホームランを打たれることはなかった。

 また、社会人野球では2003年という早い段階からタイブレークが導入されており、主要な大会が近づくと、オープン戦でも同じ方式を取り入れるケースもよく見られる。社会人では先発を任されていたこともあって、栗林が都市対抗や日本選手権でタイブレークの場面から登板するような試合はなかったが、そのような緊迫した場面を目の当たりにしてきたというのはプラスとなったはずだ。
 
 現在のプロ野球界を見ても、嘉弥真新也(ソフトバンク)、祖父江大輔(中日)、高梨雄平(巨人)など社会人出身の選手がリリーフで多く一軍で定着しており、走者を背負った場面で多く登板しているのも、社会人の大会方式が少なからず影響しているだろう。

 ちなみに、今回の東京オリンピックのメンバーに選ばれた投手11人の中で、社会人野球出身の選手は栗林だけである。シーズン中に抑えとして高い適性を示していたことはもちろんだが、日常的にタイブレークが行われている社会人野球という環境でプレーしてきた栗林をクローザーに抜擢した首脳陣の判断は正しかったと言えそうだ。

 今後の国際大会でも、短期決戦やタイブレークでの戦いを経験している投手が、侍ジャパンを支える貴重な存在になることは間違いないだろう。今大会の栗林は、そう感じさせるだけのパフォーマンスを見せていた。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。
 

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