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高校野球

甲子園出場に囚われてきた聖光学院。センバツ2回戦敗退も常連校の楽しみな“リスタート”「もっと勝ちたい」

氏原英明

2022.03.25

失点こそ重ねたが、堂々とした投げっぷりで粘りを見せた佐山。来夏に向けて楽しみな存在だ。写真:滝川敏之

失点こそ重ねたが、堂々とした投げっぷりで粘りを見せた佐山。来夏に向けて楽しみな存在だ。写真:滝川敏之

 しかし、直後の3回表に聖光学院は反撃の狼煙をあげる。主将で1番の赤堀楓がレフトへの二塁打を放ってチャンスメイク。1死3塁となって3番三好元気の犠飛で1点を返したのだった。

 逆転された直後の反撃は、試合のペースを完全に握られない意味でも大きかった。これで流れを掴み返すと、佐山も3、4回と三者凡退に抑える。5回も一人の走者こそ許したが、無失点。チームの攻撃を盛り上げるようなピッチングを見せたのだった。

 追撃からペースを掌握した試合展開は、斎藤監督からしてみれば終盤に向けてはいい流れだったという。

「5-2から5-3になるのか、離されるのか。非常に大事な局面だったと思うんですけど、選手たちが試合の流れを1回戻してくれたなというふうに思っています。ずっと選手らを激励しながら5-3、5-4にして終盤に追いつくというような信念を持ちながら、私も采配していましたし、選手も普通に追いつくぞと思ってバット振っていったと思います」

 しかし、6回表、先頭の出塁から併殺打に倒れて、チャンスを生かせないでいると、その直後に追加点を許した。佐山は粘りを見せたが、9番の清谷にタイムリーヒットを浴びて万事休す。チームは8回裏にも1失点を喫し、2-7で敗れた。

 ただ、斎藤監督はこの戦いこそ、これまでの甲子園では見せられなかったもので、そこに光を見出すと熱く語る。

「終盤、1アウト満塁とかピンチがありながらも、最小失点で抑えたというところも含めて、ちょっと可能性が感じられる大会でもありました。勝ち負けの世界の話になると、まだまだ打線は貧弱だって話になるし、ピッチャーも出力が弱いとなる。

 課題は山積みですけど、でも貪欲に自分たちの歩みを積み重ねてきたということに関しては、このチームは面白いものがあります。ですから、夏もただ単に甲子園に行ければいいということじゃなくて、今回の敗戦を踏まえて、本当の意味で強くなって、甲子園でもっと勝ちたいという貪欲さを持ちながら精進していきたいと思います」

 甲子園常連校のリスタート――。あまり聞きなれない言葉ではあるが、長い期間「甲子園出場」に囚われ、そこで結果を出し続けてきたからこそ、聖光学院にしか体験できない悩み、葛藤があったに違いない。

 初出場の甲子園は0-20で始まり、斎藤監督をはじめ、貪欲に勝利を目指してきたチームだった。しかし、いつしか「甲子園の常連」に甘んじた。

 今大会は2回戦で敗れたが、今夏に向けて、いや、夏の甲子園で勝つことに向け、新たな歴史が刻まれたことを斎藤監督の熱い言葉からは感じ取れた。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

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