専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

「たかが一本なんで」――“いつもと違う開幕戦”で本塁打を放った鈴木誠也が踏み出したカムバックへの道<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.04.17

 最後まで慎ましやかに話した彼の真意は何となく、分かる。

 初回の第1打席は2死ながら走者がいた。3回の第2打席は先制点を取ってなおも2死二塁、2対1と勝ち越した5回の第3打席は1死二、三塁と試合を決めるチャンスで、いずれも凡退してしまったのだ。カット・ファストボールに2度仕留められ、チャンジアップに空振り三振を喫したのだから、ホームランを1本打ったぐらいでは喜べない。

 実際、マイナーでのリハビリ調整中に本人が言っていた通り、打撃の調子は「内容的には良くない」。スイングスピードが絶対的に速いので、野手の間を抜けるゴロやライナー性の打球は飛んでいたが、ホームランになったような当たりは珍しく、「(バットの)芯が喰えてない」打撃が目立った。そのことが、前述した試合後のコメントにつながるのだ。

「元々は振っていくタイプではあるので、振っていくなかで修正していければなと思っていたけれど、相手のピッチャーも良かったんで、なかなか甘い球が来なかった。まだまだ、やらないといけないことがたくさんある」

 これはオープン戦で50打席~60打席に立って迎える「普通の開幕」ではなく、怪我のためにオープン戦を全休し、若手との練習試合とマイナーでのリハビリ出場でその穴埋めをした「いつもと違う開幕」である。
 
 遡ること2月25日、オープン戦が始まる数時間前、患部に異変を感じた彼は、その日限りですべての「Baseball Activity(野球にまつわる活動)」を止めて治療に専念した。オープン戦を全休する陰で、キャッチボールからベースランニング、ティー打撃からトス打撃、室内打撃、そして野外での打撃練習と段階的にリハビリを進めてきた。

 全治6~8週間とも言われた怪我だ。チームのメディカル・スタッフは慎重にリハビリを促せた。当時、鈴木はこう言っている。

「久しぶりに野球をしているなって感じがする。室内だけでやってる時はストレスもありますし、気持ち的には外でやる方がいい。外ではどうしても景色も違うし、見え方も違ってくるので、身体を大きく使おうとする。身体がまだ強張っている感じがする。でも、ここまで来たら焦っても仕方ない」

 もちろん、彼自身も怪我に対する不安はあった。

「まだ思い切りは(バットを)振ってない。どうしても気になるし。でも、患部の痛みとかはもうないんです。実際、もう治っている頃だと思うし。ただ、ここからは捻る動作も入ってくるし、今日は内角の球に止める動作をやってみたけど、急に変化球が来てバットを止めるとかは、試合になってみないと分からない部分もある。

 試合になったら、BP(打撃練習)の球とは全然違いますし。それにまた、普通の(筋肉の)張りが出た時にどう感じるか。前回はそれだと思ってたのに、(怪我を)やっているので、そこは慎重にやっていきたいです」
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号