――スカウトの方に実際に話を聞いて驚いたことはありますか？

クロマツ　スカウトの方たちは理論的なこともちゃんとお持ちなんですけど、実際決め手になる時っていうのは、全然野球と関係ないところでするんですよ。ユニフォームの着こなしとか、ランニングしてるときの走り方の佇まいとか。一番見ているのは人間性というところですね。ちょっと漫画に起こすにはあまりにも地味というか……。

　でも、やっぱり彼らの目は正しいんですよね。野球への取り組み方と通じるからなんでしょう。日本ハムのスカウトだった故・今成（泰章）さんによると、ダルビッシュ有投手（現パドレス）は素行が悪いと言われていたんですよね。なので、どこの球団も手を出さなかったんですけど、練習試合でちょっと乱調になってベンチに下がってからも、一生懸命声を出していたのを見た時に「この子は誤解されてるだけなんちゃうか？」と思い、それで獲ったという経緯があったそうです。
  　今成さんは取材場所が居酒屋だったのもびっくりしましたね(笑)。本当に野球が好きな方で、“マムシの今成”と呼ばれて手段を選ばないイメージがありましたが、裏表もなくて。当時もまだ日本ハムの球団職員としてお勤めだったんですけど、包み隠さず全部喋ってくださって、俺の名前出してもいいよ、とまで言ってくれたので、ちょっとキャラだけ変えて出演してもらいました(笑)。

――選手であれば速い球を投げる、打球を遠くに飛ばすといったすごさが分かりやすいですが、スカウトの主人公、郷原眼力を凄腕と思わせるこだわりや、工夫しているポイントは何ですか？

クロマツ　スカウトマンは実は組織の人間で、ちゃんとしたヒエラルキーの中にいる会社員なんですよね。なので、その枠を出ることがかっこいいんじゃないかと思ってます。やっぱり枠にとらわれないっていうのは意識してますね。サラリーマンでこういう人がいたらかっこいいよな、というのを意識してるかもしれないです。