専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

「データは読者を納得させるために必要。でも、マンガ的な面白さはデータを超えたところにある」『ドラフトキング』の作者が語る“リアル”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.09.27

郷原がK/9とBB/9に言及するシーン。作品の中でもデータが効果的に使われているが、クロマツ先生は「データだけがすべてではない」と言い切る。画像:グランドジャンプ提供

郷原がK/9とBB/9に言及するシーン。作品の中でもデータが効果的に使われているが、クロマツ先生は「データだけがすべてではない」と言い切る。画像:グランドジャンプ提供

――スカウトマンガと言うだけでも新しいのに、郷原は時にデータを駆使してスカウティングをします。10巻には奪三振率(K/9)や四球率(BB/9)の話も出ていたりして。スポーツ漫画においてデータは敵視されることが多かったりしますが、あえて主人公のツールとしてデータを使うと決めた理由は何ですか?

クロマツ やっぱり読者を「納得させる」っていうことが、それだけ難しいことだと思うんですよ。(データを引き合いに出したのは)育成選手がどのように成長していくかという話ですが、どのように変化したかを表すのは普通だったら球速とかしかなかったりとかするので。それだけではなくて、選手として本当に必要なのは何かを、野球を知らない人にも明示するのに分かりやすいと思ったんですね。

「こういう理由で三振が一番被害が少ない」「四球はヒットと一緒と」いうのは、すごくシンプルで分かりやすい。となれば、四球出さずにストライクだけ勝負して三振取れるやつが一番いいに決まってるじゃんという話じゃないですか。それを分かりやすく提示するには必要だったというだけなんですよね。特に作品としてデータを重視しているわけではなくて、分かりやすく説明するにはこのデータがいいよねというのを採用している感じですね。
 
 僕は別に、データだけがすべてだとは思っていないんですよ。たとえばボールの強さって何なのか? 重さって何なのか?ということは、むしろデータでは必ずしも測れないところだと思う。『ドラフトキング』にも登場はしていますけど、トラックマンもそれはそれですべてじゃないと思っているので。確かに、何かを修正する作業に用いるにはめちゃくちゃ良いツールだと思うんですけど、メンタルだって大事だし、自分の中の再現性の問題もありますよね。トラックマンを使って練習の時はそれができたとしても、実際に試合で同じように投げられるのかといったら、必ずしもそうではない。

 それに、たとえば投手が、この場面が大事だからギアを上げるという時に、相手が平凡な7番バッターなのか、マイク・トラウト選手(エンジェルス)なのかで、たとえ同じ場面でも絶対に投手の発揮する力は違うと思います。これはデータだけでは説明できないじゃないですか。ここが漫画の面白さでもあると思うんですよね。だから、トラックマンだけに頼り過ぎるのも何だかね……っていうことを、今後も描いていきたいと思っているんです。


【プロフィール】
クロマツテツロウ/奈良県出身、東京在住。右投右打。グランドジャンプにて『ドラフトキング』・『山本昌はまだ野球を知らない』(原作担当)、ゲッサンにて『ベー革』を現在連載中。その他の主な作品に『野球部に花束を~Knockin' On YAKYUBU's Door~』(月間少年チャンピオン/秋田書店)、『ヤキュガミ』(週刊ヤングマガジン/講談社、原作担当)などがある。

取材・構成●SLUGGER編集部

<後編に続く>

負けられない試合ばかりが続く“ヒリヒリした戦い”の渦中で躍動する鈴木誠也。「しんどいのはしんどい」中にも滲む充実感<SLUGGER>

山本由伸だけじゃない!? MLB公式が「今オフ入団するかもしれない日本人」を大胆予想! 今永昇太、松井裕樹の名も!

「オオタニは5億ドルに値しない」と言い放った米コメンテーターにエ軍チームメイトが反論「ショウヘイにはそれだけ価値がある」
 
 

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号