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「僕個人の意見ではなく、さまざまな人の正義を描きたい」人気マンガ『ドラフトキング』の作者が語る“野球への敬意”と“今後の野望”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.09.27

「靭帯が切れてでも甲子園に行く」と語る高校球児に対する正解とは何か。『それぞれの選手ファースト』にて監督、スカウト、チームメイトそれぞれのアプローチが描かれている。 画像:グランドジャンプ提供

「靭帯が切れてでも甲子園に行く」と語る高校球児に対する正解とは何か。『それぞれの選手ファースト』にて監督、スカウト、チームメイトそれぞれのアプローチが描かれている。 画像:グランドジャンプ提供

――『ドラフトキング』であえて両方の視点を描くのは、担当編集さんとしてもそういう部分を出していきたいという意図があるんですか?

古屋編集 そうですね。クロマツ先生は人間をすごく描ける方なので。やっぱり人間にはそれぞれの正義があって、いろいろな立場で見方が違うじゃないですか。どちらが味方でどちらが敵という話の作り方は分かりやすいんですけど、クロマツ先生の場合はいろんな立場の人の見方をちゃんと切り替えて見られる方なので、話を作る時も多面的な打ち合わせができる。だから、こういうすごく複雑なストーリーも作れるんだと思います。

――また、物語の展開におけるリアルさも、『ドラフトキング』の魅力だと思います。ものすごく努力して甲子園に行っても初戦であっさり負けたり、クラブチームは強豪の社会人チームに歯が立たなかったり。「努力したから勝つ」という安易な展開ではなく、その努力が必ずしも実らないこともあるという“シビアなリアルさ”へのこだわりを教えてください。

クロマツ 現実がそうじゃないですか(笑)。僕は以前、『野球部に花束を』というコメディ漫画を描いていたんです。コンセプト的には「絶対に甲子園には行けないんだ」と思って読んでもらう漫画だったんですよね。実際、結局甲子園には行けないんですが、それでも最後の夏の大会では、なんだかんだ勝つんじゃないかと思った読者の方もいたみたいで。「クロマツは本当に負けさせるよな~」って言われたんですよ(笑)
 
 でも、実際にはほとんどの人たちが甲子園には行けないし、それでも高校野球生活の中で何かをつかんで、いい思い出や友達を作って卒業していくというドラマを描きたかったんですよね。そういうのって後の人生で絶対に無駄にはならないじゃないですか。負けたことは失敗ではないと思うし、だからこそ、そこを描くのが僕らエンタメ側の仕事なのかなって思ってます。

――最新の章『ドロップアウトした天才』では、チームとしては負けたけれども、強豪社会人チームにクラブチームから補強選手として呼ばれて、都市対抗に出場するという展開が描かれましたね。

クロマツ 補強選手制度自体、あまり知られていないんですよね。自分のチームが勝ち上がらなくても都市対抗に出られるというのは、僕はめちゃくちゃ面白いと思っているので、やりたかったんですよ。それに、都市対抗がどれだけレベルが高くて、盛り上がってるかっていうのもみんな知らないと思うので。クラブチームの選手が補強選手として都市対抗で活躍するのも、僕は現実でもあり得ると思っています。

『ドラフトキング』に出てくるクラブチームは、ゴールドジム・ベースボールさんがモデルなんですが、実際に松川虎生(ロッテ)くんと同い年の仙台育英高出身・笹倉(世凪)くんは、今は別のスポーツジムが運営してるクラブチームでプロを目指していたりするんです。これから、漫画が現実になるんじゃないかって楽しみですよね。
 
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