一方、開幕から低空飛行が続いたメッツはシーズン中にジャスティン・バーランダー、マックス・シャーザー、デビッド・ロバートソン、トミー・ファムといったベテランの主力選手たちを次々と放出。その際にスティーブ・コーエン・オーナー、ビリー・エプラーGMと対話の機会を持ったというシャーザーは、そこでの話をこう振り返っている。
「『私たちは25、26年に優勝を狙うチームを目指している。早くて25年、おそらく26年だ。今オフは大物と契約せず、24年は移行期になる』と言われた」
今年のトレード期限には、28歳の主砲ピート・アロンソをブルワーズに放出するトレードが成立寸前だったとも伝えられている。現状、先発ローテーションで来季も枠に入ることが確定しているのは千賀滉大とホゼ・キンターナだけ。完全な再建とまではいかずとも、戦力不足の状態なのは明らかだ。こういった背景を考えれば、メッツも大谷争奪戦に本格参戦することはなさそうと考えるメディア、関係者が多いのは理解できる。
ただ……個人的には、メッツが大谷獲得に動く可能性は依然として十分あるとみている。なぜなら、状況的に大谷の移籍先として非常に理に叶っていると思える要素が少なくないからだ。ご存知の通り、大富豪のコーエン・オーナーの資金力に底はなく、今季中盤の時点であるチーム関係者は「オーナーは大谷獲得を熱望している」と証言していた。それがいくらになるにせよ、大谷獲得のための資金力でメッツが他球団の後れを取ることだけは絶対にない。
戦力的に見ても、“移行期”であるがゆえに大谷に合わせたチーム作りが可能になる。まず、現時点ではDHは固定されていない。先発陣にも、6人ローテーションを敬遠しそうな投手は現状でおらず、特に新エースになった千賀は中5日での登板に異論はないだろう。
DH枠を開け、6人ローテーションを整えなければならないという点で、大谷はどのチームでも簡単に迎え入れられる選手ではないのだが、メッツには少なくともその体制は整っている。
確かに今季は予想外の低迷だったが、昨季101勝を挙げるだけの力があるチームだったことも無視できない。オーナーが勝利にこだわっていること、野手にはフランシスコ・リンドーア、アロンゾ、ジェフ・マクニール、ブランドン・ニモ、フランシスコ・アルバレスとタレントが揃っているし、投手陣の整備次第で比較的すぐにコンテンダーに戻ることは可能だろう。大谷を獲得しても来季は登板できないのがネックだとしても、25年にはマウンドに立てるのであれば、「25、26年に優勝を狙うチームを目指す」というエプラーGMのタイムラインにもぴったりとハマる。
「今オフは大物と契約しない」というコメントは気になるが、大谷のような歴史的な人材は別枠ではないか。獲得できる現実的なチャンスがあるになら、コーエン・オーナー、エプラーGM、そして新たに就任したばかりのデビッド・スターンズ編成総責任者は全力を挙げて争奪戦に加わってくるに違いない。
もちろん、ここまで述べてきたのはあくまでメッツ側の事情、背景であり、大谷サイドの意思を考慮したわけではない。前述通り、メジャー入り時にはニューヨークに冷淡だった大谷が心変わりしていると考える根拠もまだない。
ただ、繰り返すが、メッツには大谷を迎え入れるだけの土壌は整備されている。上記のローゼンタール記者が先日、「本命はドジャースだが、メッツを除外できない。コーエンが大谷を見送るとは考えられないからだ」と発言したのも、そのような背景があるからだ。
このオフ、尻に火がついたニューヨークの2チームはどんな動きをするのか。中でもシーズン途中から来季以降を見据えた準備をいち早く始めた印象があるメッツの動向には注目だ。目を離すべきではない。新たな機会を求めた人材が世界中から集まってくることから、“セカンドチャンスの街”と呼ばれるニューヨーク。メッツがそのチャンスを手にしても驚くべきではないのだろう。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
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ただ……個人的には、メッツが大谷獲得に動く可能性は依然として十分あるとみている。なぜなら、状況的に大谷の移籍先として非常に理に叶っていると思える要素が少なくないからだ。ご存知の通り、大富豪のコーエン・オーナーの資金力に底はなく、今季中盤の時点であるチーム関係者は「オーナーは大谷獲得を熱望している」と証言していた。それがいくらになるにせよ、大谷獲得のための資金力でメッツが他球団の後れを取ることだけは絶対にない。
戦力的に見ても、“移行期”であるがゆえに大谷に合わせたチーム作りが可能になる。まず、現時点ではDHは固定されていない。先発陣にも、6人ローテーションを敬遠しそうな投手は現状でおらず、特に新エースになった千賀は中5日での登板に異論はないだろう。
DH枠を開け、6人ローテーションを整えなければならないという点で、大谷はどのチームでも簡単に迎え入れられる選手ではないのだが、メッツには少なくともその体制は整っている。
確かに今季は予想外の低迷だったが、昨季101勝を挙げるだけの力があるチームだったことも無視できない。オーナーが勝利にこだわっていること、野手にはフランシスコ・リンドーア、アロンゾ、ジェフ・マクニール、ブランドン・ニモ、フランシスコ・アルバレスとタレントが揃っているし、投手陣の整備次第で比較的すぐにコンテンダーに戻ることは可能だろう。大谷を獲得しても来季は登板できないのがネックだとしても、25年にはマウンドに立てるのであれば、「25、26年に優勝を狙うチームを目指す」というエプラーGMのタイムラインにもぴったりとハマる。
「今オフは大物と契約しない」というコメントは気になるが、大谷のような歴史的な人材は別枠ではないか。獲得できる現実的なチャンスがあるになら、コーエン・オーナー、エプラーGM、そして新たに就任したばかりのデビッド・スターンズ編成総責任者は全力を挙げて争奪戦に加わってくるに違いない。
もちろん、ここまで述べてきたのはあくまでメッツ側の事情、背景であり、大谷サイドの意思を考慮したわけではない。前述通り、メジャー入り時にはニューヨークに冷淡だった大谷が心変わりしていると考える根拠もまだない。
ただ、繰り返すが、メッツには大谷を迎え入れるだけの土壌は整備されている。上記のローゼンタール記者が先日、「本命はドジャースだが、メッツを除外できない。コーエンが大谷を見送るとは考えられないからだ」と発言したのも、そのような背景があるからだ。
このオフ、尻に火がついたニューヨークの2チームはどんな動きをするのか。中でもシーズン途中から来季以降を見据えた準備をいち早く始めた印象があるメッツの動向には注目だ。目を離すべきではない。新たな機会を求めた人材が世界中から集まってくることから、“セカンドチャンスの街”と呼ばれるニューヨーク。メッツがそのチャンスを手にしても驚くべきではないのだろう。
取材・文●杉浦大介
【著者プロフィール】
すぎうら・だいすけ/ニューヨーク在住のスポーツライター。MLB、NBA、ボクシングを中心に取材・執筆活動を行う。著書に『イチローがいた幸せ』(悟空出版 )など。ツイッターIDは@daisukesugiura。
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