専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

生まれた時に父は刑務所、2度の刃傷沙汰...ワールドシリーズで大活躍中の“狂犬”トミー・ファムの壮絶人生<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2023.10.31

 この「ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つける」ファムのパーソナリティは、どうやら生まれ育った環境が大きく関係しているようだ。

 ファムは1988年3月にラスベガスで産まれた。ファムと双子の妹のを産んだ時、母はまだ17歳だった。父は高校時代にアメフトで鳴らしたが、いつしかドラッグに溺れて犯罪に手を染め、刑務所暮らし。ファムは極貧の中で育った。

 映画『フィールド・オブ・ドリームス』にも描かれているように、幼少時代の父とのキャッチボールが「野球の原点」だという選手は日米問わず多い。だが、ファムはそんなものとはついぞ無縁だった。「親父はいつも刑務所にいたから、キャッチボールがしたい時は壁にテニスボールを投げていた。打撃練習をする時は自分でボールを宙に上げて打っていた」。

 12歳の時、母親から言われたことをファムはずっと忘れられなかったという。「あんたは黒人で、父親が刑務所にいる。ってことは、あんたも刑務所に入る可能性が高いってことだよ」。
 ファムは父親を反面教師にして、スポーツにも学業にも真面目に打ち込んだ。ある時、ファムが所属していた少年野球のチームが公園を貸し切りにしたことがあった。チームメイトがゴーカートやライドに乗ってはしゃぐ中、ファムだけは一人打撃ケージにこもって打ち続けていたという。母親から妹の世話も仰せつかり、デート相手の素性を調べ、夜遊びなども厳しく管理した。「球界きっての武闘派」には、そんな生真面目な一面もあるのだ。

 マイナー時代には円錐角膜という眼の病気を発症し、キャリアの危機を迎えたが、それも見事に克服して生涯年俸3000万ドル近くを稼ぐ立派なメジャーりがーとなった。

 ファムは自らの半生を振り返ってこう言っている。「自分を哀れんだりはしない。自分の経験を苦労だとも思わない。人生ってのはそんなものさ」。

 そんなファムが35歳になって、メジャーリーガーにとって最高の檜舞台で輝いている。それもまた人生、ということだろうか。

文●久保田市郎(SLUGGER編集長)

※SLUGGER 2023年3月号『MLB珍獣図鑑』を加筆・修正

【山本萩子のMLBプレーオフ至上主義!│前編】球場の盛り上がり、選手の表情、起用法...何もかもいつもと違う独特の魅力<SLUGGER>

【山本萩子のMLBプレーオフ至上主義!│後編】10月の大舞台で輝いてこそ真のスーパースター。今年の注目選手は?<SLUGGER>

大谷翔平はフィリーズでプレーするべきだ!――ブライス・ハーパーとフィラデルフィアの幸福な関係を見て思うこと<SLUGGER>

 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号