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プロ野球

柳田悠岐と千賀滉大――なぜ、日本を代表する二人の“メジャー”への想いは分かれたのか

喜瀬雅則

2019.12.27

 その時、スカウト陣は秋山に傾いていたというが、編成育成部長だった小林至(現・江戸川大教授)は、球団会長の王貞治に「実は、迷っています」と助け船を求めたという。

「この中で、一番誰が飛ばすんだ?」

 その王の“金言”で「ソフトバンク・柳田悠岐」は誕生した。

 プロ9年間で、MVP1度、首位打者2回、ベストナイン4回、ゴールデングラブ賞4回。2015年(平成27年)には、打率3割6分3厘、34本塁打、32盗塁の「トリプルスリー」を達成。2018年(平成30年)4月21日の日本ハム戦(札幌ドーム)ではサイクルヒットもマーク。記録を列挙するだけでも、この男の凄さが分かる。

 これだけの実績を積み重ねて迎える節目の10年目、2020年(令和2年)を前に、球団側から提示されたのは、超大型の「7年契約」だった。

 年俸5億7千万円、4年間は減額なし。出来高制で上積みもある。5年目からは、それまでの4年間の成績などを踏まえて、改めて見直すという、破格の好条件だ。
 
 かつて、ポスティング・システムによるメジャー移籍の可能性について、球団側と話し合ったこともある「メジャー志向」の柳田にとって、7年契約の締結によるFA権行使の封印は、事実上の「メジャー挑戦断念」を宣言したことにもなる。
 
 一方の千賀も、柳田と同じく、高校時代は「ノーマーク」ともいえる存在だった。
蒲郡高時代、1年夏は県3回戦、2年夏は県1回戦、3年夏も2回戦で敗退。このレベルだと、よほどの高い評判でもなければ、プロのスカウトが視察に訪れる試合ではない。

 だから“最後の夏”すら、無視されていたに等しい。その埋もれた逸材を見出したのは、名古屋市内のとある運動具店主だった。懇意にしていたソフトバンク・小川一夫スカウト部長(当時・現2軍監督)に連絡、その情報をもとに、ソフトバンクのスカウト陣が学校へ視察へ出向いたことがきっかけで、千賀を育成指名することになったという。

 入団当時の年俸は270万円。それが、プロ10年目を迎える2020年、その年俸は3億円に到達。これぞ、究極のシンデレラストーリーだろう。
 

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