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プロ野球

【玉木正之のベースボール今昔物語:第14回】令和のファンにとっては「よく知らない人」なのか…日本のプロ野球を創り上げた長嶋茂雄を永遠に語り継ごう<SLUGGER>

玉木正之

2025.07.03

 そこで私は「長嶋茂雄、知ってるよね?」と生徒に聞いた。するとクラスの全員が、静かに頭を横に振った。

「君たちの大先輩だぞー!」「日本のプロ野球を創りあげた人だぞー!」「天覧試合でサヨナラホーマーを……」と思わず私が叫ぶと、最前列に座っていた男子学生が、「最近、国民栄誉賞の表彰式で、松井(秀喜)さんの横に立っていた人ですか?」と言った。

 私は、ゆっくりと大きく深呼吸してから、「そうだ」と答えた。

 その後、授業をどのように進めたのか、もう10年以上前の出来事であるこの“事件”は、ショックとともに私に記憶から消えてしまっった。

 が、長嶋氏死去の報に接した際、この“事件”と、その時の学生たちの無反応な表情を久々に思い出した。TBSからかかってきた電話を受け、長嶋さん死去を取り上げるワイドショー『ひるおび』への出演準備をしながら、よほど具体的な話をしないと若い人には話が通じないぞ、と思ったのだった。立教大学で「長嶋を知らない」といった学生たちも、今や30歳を超す立派な大人なのだから……。
 
 王貞治は通算868本もの本塁打を打ったと言えば、世界のホームラン王の凄さは誰にでも分かる。が、長嶋さんの凄さを口で説明するのは、なかなか難しい。

 とはいえ、“記録の神様”と呼ばれた元報知新聞記録部長の故・宇佐美徹也氏によれば、長嶋さんにも次のような見事な記録が残されていると力説する。

 ホームスチールに6度も挑戦し、2度成功。ランニングホームランを通算3回も放ち(日本記録は5本)、日本シリーズでも記録している。二塁打を打った時に三塁を欲張ってアウトになったことが7回。単打で二塁を欲張ってアウトになること13回。

 宇佐美氏は、これらの迫力満点のダイナミックなプレーの記録を「暴走」としか思えない人は、プロ野球ファンとして不幸と言うほかない、と力説している。

 また、長嶋さんの巨人在籍期間(58~74年)の選手ごとの勝利打点を調べると、①長嶋259 ②王209 ③森65 ④柴田62 ⑤国松57……となり、同じデータを日本シリーズに限って調べると、①長嶋11 ②王6 ③柴田5 ④末次4 ⑤堀内3……になるという。この記録だけでも、長嶋茂雄というベースボール・プレーヤーがいかに勝負強い選手であったか、いかにファンの期待に応える選手であったか、いかにファンから大喝采を受ける選手であったかが理解できるだろう。

 つまり、「王は記録に残る選手で、長嶋は記憶に残る選手」という表現は、確かに両選手の一面を表してはいるのだが、長嶋茂雄というプレーヤーも「素晴らしい記録」を数多く残しているのだ。
 
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